第19章 ずるい女でごめんなさい【青峰】
「あれで、終わりなのか…?」
あの後日も沈んだということで理央奈と別れ、今日に至る。
そして今まで1度も会えていない。
この事実は青峰にある不安を抱かせるには十分すぎた。
彼女は"約束"を守った今、自分のことなんてどうでもいいのではないだろうか、と。
何度か街で理央奈の姿は見かけている。
しかしそのいずれも忙しそうに走っていて、とても声をかけられる状況ではなかった。
考えてみれば彼女は今年で20歳を迎える。
今年別の大学を受験したため、学年としては1年遅れているが立派に成人しているのだ。
「あいつは…俺とは違うんだ…」
彼女が自分と全く違う世界を生きていると、実感してしまった。
「嫌だ…」
嫌だった。
彼女が大人となってしまうことが。
自分のそばから離れていってしまうことが。
ここ数年、一度も会えずに膨らみ続けた思いが溢れそうになる。
自分がどれほど彼女に焦がれていたかを思い知った。
「会いてぇ…」
今、何してる。
何を考えているのだろうか。
少し経つとすぐ彼女のことを考えてしまうことに気付き、恋する女子高生のように相手に思いをはせる自分に苦笑した。
そのとき、ポケットの携帯が震える。
"今どこにいる?"
差出人は理央奈。
久しぶりに会えると暗に伝えているこのメールに、普段なら心が浮き足立つはずなのに、今日はなぜか沈む。
会いたいのに、会いたくない。
彼女に久しぶりに会いたいのに、自分と違う世界を生きる彼女に会いたくない。
そんな矛盾した気持ちのまま、青峰は自身の居場所を打ち込んだ。