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短編集【黒子のバスケ】

第17章 太陽のような人【火神】


「どうすれば良いと思う?」
「…僕に聞かれても困ります」

時は流れて昼休み。
大我は購買にパンを買いに行ったのでもう1度黒子くんに相談したらあしらわれてしまった。

「普通に渡したら良いじゃないですか、作ってきたんでしょう?」
「っ、な…なぜそれを…」
「作って来ない人じゃありませんから、九条さんは」

確かに鞄には昨日母に教わってなんとか作ったシフォンケーキがある。
渡すタイミングもいくらでもあった。
しかしやはり渡すのに躊躇いのある私は今日1度もケーキを出していない。

このままでは1日が終わってしまう。
分かってはいるのだが、普段自分で美味しいものを作れて舌の肥えている彼が私のケーキを食べた時にどんな表情をするのかを考えると、どうしても手が止まるのだった。

黒子くんが黙っているのを良いことに、私は俯いて今まで気にしていたある思いを吐露する。

「申し訳ないの」
「…」
「大我は優しいから、どんな味でも無理して食べてくれると思う。でも、その心遣いがすごく申し訳なくて」
「おい、理央奈」
「誕生日の大我にそんな気遣いさせるくらいならいっそあげない方が良いんじゃないかなって」
「おいっ!!」
「へ?…あれ、大我?」

突然の大声に顔を上げると、そこにいたのは黒子くんではなく大我。
周りを見渡しても黒子くんらしき存在は見当たらず、自分が図られたと理解するまでに大して時間はかからなかった。

本人の目の前で話してしまうとは恥ずかしい。
彼の顔が見れないと目を逸らすと、許さないというように彼は私の両方の頬を押さえて正面に向けさせる。

必然として大我と目が合い、羞恥で熱くなった。
そんな私にバカだなと笑いかけると、彼はそっと唇を寄せた。

短いキス。
悪戯の成功した子供のように歯を見せる彼に、ぽかんと目を丸くしてる私はどう映っただろう。
大我は頬に当てていた手を下に滑らせ、私の両手を包み込んでそれを見つめながら話し始めた。

「…味なんてどうだっていい」
「…」
「お前が俺のためにこんなに指を怪我してまで作ってくれた、それだけでもう満足だ」

彼の言葉は沈んでいた私の心に温かい光を与えてくれる。
冷めていた心が少しずつ熱を帯びて、前向きな気持ちにさせてくれる。

まさしく太陽のような人。

そんな大我の気持ちが嬉しくて、私はこくりと頷いた。
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