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短編集【黒子のバスケ】

第16章 広い背中【青峰】


中学時代、私と青峰は付き合っていた。
バスケに一生懸命で、純粋な彼が大好きだった。

けれど、バスケは彼に誰もが羨む才能と共に大きな試練を与えた。
突出しすぎた才能は彼を孤独にし、孤独は彼をバスケから遠ざけた。

練習して上手くなったところで、自分と対等にやれる人間なんていない。
それなら、上手くなったって仕方がない。

"俺に勝てるのは、俺だけだ"

それは過大評価でもなければ、自慢でもない。
ただの、事実。

バスケから離れた彼と私の距離も次第に離れ、気がついたら別れてた。
別れよう、そんな言葉を言ったのはどちらだったのかさえ、覚えてはいない。
あまりにも自然に別れてしまったため、友人には別れたことを信じてもらえなかった。

「…もう、バスケはやらないのかな」

班員と別れて1人山を下りている中、ぽつりと呟く。
聞いているだけだと簡単なように思えた下山、急な斜面があったり、思わぬところに石が出っ張っていたりしてなかなかに辛い。
その状況でつい呟いてしまうような集中力のない私が足元の岩に気付くはずがなく。

「…きゃっ!」

盛大に引っかかった私は思い切り転んだ。
なんて無様な姿だろうと起き上がる中、ふと足に違和感を覚える。
まさかと思って足首に触れると、

「っ…!」

予想通り走る激痛。
どうやら岩に足をかけた時挫いたようだった。

「最悪だ…」

いろんなものに掴まりながらよろよろと立ち上がる。
こけたときに地図は汚してしまい使い物にならない。
とりあえず下っていけば麓には着くのだろうが、この足では歩ける道は限られる。

そしてさらに運の悪いことに、ポツリと水滴が空から降ってきた。
そういえば天気予報で時折雨が降るとか言っていたような気がする。
こんなぼんやりとしか天気予報を見ない私が雨具なんて持っているはずがなく。

「……最悪だ…」

さっきより数段低いトーンで、同じ言葉を吐き出した。
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