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短編集【黒子のバスケ】

第15章 勘違いの末に【笠松】


そして、その日、その時がやってきた。

「で、なんだ急に。時間寄越せなんて珍しいじゃねぇか」

部活終了後、私は着替え終わった笠松と共に、教室に来ていた。
誰もいないことを確認し、中に入る。
同時に笠松が用件を聞いてきた。

いきなり本題から切り込むのも彼が困るし何より私が恥ずかしい。
とりあえず無難な方から行こうと、カバンの中から袋を取り出し、差し出した。

「た、誕生日おめでとう…笠松」
「っ…おう、サンキュ」

無難な方からと言っておきながら心臓は既にばくばくだ。
目を瞑って勢いよく差し出した私はさぞ不恰好だろう。
もう少しちゃんとした渡し方を考えていたのに、とため息をつきたい気持ちになるが、彼がそれをやや頬を赤らめて受け取るのを見たらどうでもよくなった。

中を開けていいかと聞いてくる彼に頷くと、彼は緊張したように袋を開き、中のものを取り出す。
それは黒いリストバンドだった。

「リストバンド…?なんで」
「普段から着けてもらえたらなって…ここ見て」

笠松からリストバンドを受け取り裏返す。
そこには目立つよう白い糸で"FIGHT! 理央奈"と刺繍がしてあった。

「私だと思って頑張れ!…みたいな…」

普段裁縫しないわりに頑張ったんだよ、と苦笑しながら告げる。
気に入ってもらえたか分からないけど、精一杯やったと続けたかった言葉は飲み込んだ。

突然、笠松に抱きしめられたから。

「え?ちょ、笠松…?」
「汗臭いと思うがすまん」
「いやそれは良いんだけど…」

急なことに頭がついていかない。
あわあわとしていると、お前可愛すぎだろという掠れた声が耳に入った。

「俺のこと好きじゃないくせに何でそういうことするんだよ」
「……ん?」

その後続けられた言葉に再び頭がついていかない。
その後も何か続けようとする彼を制止し、とりあえず誤解を解こうという一心で口を開いた。

「笠松が好き!!」
「……は?」

今度は彼がぽかんと目を見開く。
私も勢いとはいえ予定にない告白をしてしまい頭はパニックだった。

なんとか互いに落ち着いたところで、お互いの今まで思っていたことを言い合うことになった。
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