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短編集【黒子のバスケ】

第15章 勘違いの末に【笠松】


「笠松、部活終わった?」
「あ、あぁ。悪いな九条、すぐ着替える」
「良いよ、ゆっくりどうぞー」

部活終わり。
扉からこっそり体育館を覗くと、ちょうど解散した彼らが目に入った。
声をかけると、キャプテンの顔をしていた彼は少し穏やかな表情になる。
その変化が、自分は特別だと言ってくれているようで嬉しかった。

あの日、席替えで彼の隣になってから2ヶ月の時が流れた。
あれから特に何か告白をしたわけではないが、私と彼はほぼ恋人のような日々を過ごしている。

バスケ部は忙しいから、一緒に登校することや出かけることは難しいし、授業中はお互いからかわれるのが嫌でそんなに話さない。
でも、放課後なら私が待てば彼と帰れる。
その時間が、唯一ともいえる楽しみだった。

「すまねぇ、待たせたな」
「ううん、じゃあ帰ろうか」

相変わらず笠松は照れ屋で、2人で歩いていても一定の距離が空く。
あまり私の目をまっすぐ見てくれることもないし、基本声をかけるのは私だ。
まるで私が彼に片思いしてるようじゃないか。

正直あの時は笠松が好きかどうかは半信半疑だったけど、あれから一緒に帰ったり、彼の試合を観に行ったりしたことで私は確信を持っている。

私は彼が好きだと。

バスケ部の人相手にしか見せなかった活き活きとした表情を、私にも少しずつ見せてくれるようになった。
私が困っていたとき、さりげなく手を貸してくれた。
メールのやりとりも頻繁になってきて、彼もよく話すようになった。

それら全てに私は惹かれて、胸がときめくようになったのだ。
これは恋だとあっさり認めた。

しかし笠松はどうなのだろう。

あれから、彼は私が黄瀬と話していても何も言ってこない。
穏やかな表情を見せてくれるようにはなったけど、部活時間外でならバスケ部にもその顔をする。
最近私にはある不安が生まれていた。

私は彼に友達として見られているのではないかと。

その答えはまだ聞けていない。
しかしそれをはっきりさせられる一大イベントが迫ってきていた。

7月29日、笠松の誕生日。

その日、私はきちんと彼に想いを伝えようと決心していた。
そしてこのぼんやりとした関係に終止符を打とうと。

「…笠松。明日、さ…放課後、時間頂戴」
「?おう、わかった」

彼の了承を聞いた後、別れる。
心臓の音が只々うるさかった。
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