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短編集【黒子のバスケ】

第14章 甘い鎖【赤司】


夕食後、赤司さんに誘われて彼の部屋を訪れた。

結局あの後いくら見ていても、名を呼んだ時のような笑みを彼は見せなかった。
彼の見せた温かさのある笑みが、もう1度見たい。
そんな下心もあって、私は彼の誘いに乗った。

「おいで、理央奈」
「…せ、征十郎さん、そこは…」
「何もしない。良いからおいで」
「…はい」

彼に座るよう促されたのはベッドだった。
正直躊躇うも彼の鋭い眼光に射抜かれては座るしかない。
大人しく座ると、彼はよしよしと私の頭を撫でた。

「良い子だ」

耳元で囁かれる言葉に震える。
甘さを含んだ、吐息交じりの言葉。
それが本心からの言葉ではなくても、思わず鼓動が高鳴るのだ。

「せ、征十郎さんは…なぜ私に良くして下さるのですか」

隣に腰掛けた征十郎さんとの距離が近い。
気を紛らわせるためにも、そう問いかけた。

「なぜそんなことを聞く?」
「私よりあなたに相応しい方はたくさんいらっしゃるし…」
「僕が君を好きだから、とは考えないのかい?」
「そうはとても思えません」
「つれないね」

そう言った彼は後ろに倒れ込み、ネクタイを緩める。
色気漂うその仕草に照れから軽く目線をそらすと、クスリと彼に笑われた。

「君と僕が似ているから、だ」

視線を戻すと同時に告げられた答え。
理解が出来ず呆然としていると、突然腕を引かれて私は征十郎さんの上に倒れこんだ。

互いの吐息が感じられる程の距離。
ちらりと目線を彼に向けると、向こうも同様に私を見ていて視線が絡み合った。
丁度手を置いていた場所から彼の鼓動が伝わる。
それがなんだか恥ずかしくて離れようとするも、彼に掴まれている腕のせいでそれは叶わなかった。

「君は幼少期から親のいない日々を過ごしている。僕も理由は違えど親の愛情を受けることなく育った」
「…」
「だから互いに無償の愛を求めている。その証拠に君は恋人でもない僕を拒まない」
「…だったら、なんだと言うんですか」

彼の言葉は的を射ていた。
昔から友達と遊んでいても、彼女らには迎えが来るのに私には来ない。
親から愛されてなかったわけじゃないけれど、私は確かにいつもそばにいて私を愛してくれる存在を欲していた。

「僕と契約をしないか、理央奈」
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