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短編集【黒子のバスケ】

第14章 甘い鎖【赤司】



「帰るぞ、理央奈」
「はい、赤司さん」

毎日同じ時間に迎えに来る彼。
別にいらないと遠慮しても、

「僕が君を迎えに行きたいのだから、やらせてくれ」

と聞く耳を持たない。
暫く断り続けていたのだが、日に日に彼の機嫌が悪くなり、親からも何が不満だと怒られてからは諦めて一緒に帰るようにしていた。

「学校はどうだい」
「楽しいです、皆さん良い人ですし」
「そうか、なら良かった」

そう言って微笑む赤司さんは非常に端正な顔立ちをしているため美しい。
しかしその笑みに温かみはなく、私には良く出来た人形のように見えた。

洛山高校に入学し、初めて出会ったこの人。
特に何かあったわけではないのに、なぜか彼に気に入られた私は彼に保護されて過ごす毎日を送るようになった。

別に家柄が良いわけじゃないし、私が天才なわけでもない。
私より家柄の良い人、顔の、頭の良い人なんてクラス内にもごろごろいる。

なのにどうして、私なのだろうか。

何を考えているかわからない。
何に喜び、悲しむのかさえわからない。
感情を共有できない。

それが、私にとっての赤司征十郎だった。

「ご両親は?」
「今日からまたアメリカです…1週間程」
「そうか、ならまた僕の家で食事を取っていくといい」
「ありがとうございます」

仕事でよく海外へ行く私の両親。
そのため幼い頃から数日1人で過ごすことなど良くあることだった。
けれどそれを聞いた赤司さんが提案してきたのだ。

"年頃の娘が1人は危ない。せめて夕食ぐらい食べていったらどうだ"

と。
口調は提案だったが、それは命令。
従わないと面倒なことになることは登下校の件で知っていたし、1人での食事も味気なかったので、私はそれに甘えることにした。

「ところで理央奈」
「何でしょう」
「なぜ赤司"さん"などと呼ぶんだい?他人行儀じゃないか」
「いえ、名家の方を馴れ馴れしく呼ぶことなんて…」
「征十郎、だ。良いね?」
「…はい、征十郎さん」

名前を呼んだ時に浮かべた彼の満足そうな笑みが、いつもの人形のようなそれとは違う気がした。
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