第14章 甘い鎖【赤司】
「…契約?」
私を起き上がらせると同時に自分も起き上がった征十郎さんはじっとこちらを見つめる。
私もそらすことなく見つめ返した。
「簡単なことだ、互いに求めているものを互いが与える。それだけだ」
私が彼を愛すれば、彼は私を愛する。
そういう事だと、彼は告げた。
「…あなたはそれで良いんですか」
「あぁ、構わない」
彼が愛を求めているようには見えない。
むしろ邪魔だと捨てそうだ。
そんな私の心を読んだのか、彼は私の顎を掴んで上げさせると言った。
「僕が愛を求めていようといなかろうとどうでも良いだろう。君はこの契約を結べば欲しかった無償の愛を受けることが出来るのだから」
この人から受ける、無償の愛。
それが幸せかどうかはわからない。
でも確かに私は1人で寂しい時共にいてくれる誰かが欲しいのだ。
それなら。
「結びます、その契約」
「契約成立だな」
成立の証だというように、彼は私の顎を掴んだまま私に口付ける。
触れるだけのそれは、互いの温もりを分け合い、離れた。
「改めてこれからよろしく、理央奈」
「よろしくお願いします、征十郎さん」
愛のための、愛のない契約。
それは間違ったことだとわかっていても、結んだからには逃げられない鎖。
そっと抱きしめてくれる征十郎さんに応えながら、私は私達を縛る鎖の存在を感じていた。
「……これでお前は僕のものだ、理央奈」