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短編集【黒子のバスケ】

第12章 男女の友情【緑間VS高尾】


「おい、九条」

ぐいっと手を掴まれて緑間の元に引き寄せられた。
その強い力と、繋いだ手の大きさを嫌でも意識してしまうその行為に驚き、彼を見上げると。

「お前まで迷子になったら困るのだよ」

とのこと。
普通に聞けば失礼な言葉だけれど、その真意がわかる私としてはそんな彼の気遣いに自然と口角が上がるというもの。

「緑間は紳士だね!」
「…なんでそうなるのだよ」
「自然と気を遣えてさ、優しいじゃん」
「お前だからに決まっているだろう」

思わず足を止めた…かったが彼に手を引かれているのでそれは叶わなかった。
緑間の言った言葉を頭の中でゆっくり分解して組み立てる。
何度その作業をしてもその発言の意味は1通りしか見つからない。

「え、あの…へ?」

混乱して、顔が真っ赤であろう私を見て彼は一瞬困ったように眉をひそめる。
その後ふい、と前を向き直すと小さく呟いた。

「…忘れろ、ほら、行くのだよ」

その耳元はほんのりと朱に染まって。
普段冷静な彼が赤くなることもあるのかと意外に感じると同時につられてもっと熱くなる頬を押さえる。

子供に見せた優しい、柔らかい笑顔。
私に見せた、照れ隠しの表情。

そのどちらも破壊力が強すぎて、しばらく顔を上げることができなかった。

おかしい、

私、今日おかしい。

緑間を、高尾を、異性として意識している。
今までこんなことなかったのに、いつからだろう。

必死に記憶を辿る。

「…高尾との電車…」

そして浮かび上がる1つの言葉。




"好きな奴とかいんの?"





あれから、何かが変わった。
私の中で、彼らの見方が変わった。

ただの友達から、異性の友人へと。

異性の友情は成立するのかなんてよく言われる。
今まではさらりと肯定できたけれど、今はどうなのだろう。

緑間の、高尾の動作にいちいち私は反応している。
自然と頬に熱が溜まり、心臓の音はやかましくなる。

これで、本当に友情は成立しているのだろうか。

「お、いたいた!どこいたのさ2人共!」
「迷子がいたのだよ」
「ぶはっ!何、2人で迷子の保護してたの?流石!」

合流した高尾と緑間が何かを話している。
その会話に入ることも出来ずに、私はその姿を見つめることしかできなかった。


そして、決断の時は訪れる。
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