第12章 男女の友情【緑間VS高尾】
「来たか」
「真ちゃーん!早いね相変わらず」
「お前らが遅いのだよ」
「…まだ待ち合わせ10分前なんだけど」
到着した遊園地には既にチケットも購入してくれていた緑間の姿が。
3人になるとさっきまでの緊張が嘘のように気が楽になる。
高尾も普通に接してくれるし、緑間は相変わらずだし。
今日は楽しくなりそうと、一人顔をニヤつかせた。
「何をしまりのない顔をしているのだよ九条、行くぞ」
「し、しまりのないって酷くない?!」
「いやいや、今の顔はヤバかった」
「ヤバイ?!ヤバいって何どういうこと?!」
じゃれ合いながら、笑いながら、
開園した遊園地に3人で入った。
それから暫く遊び通した私達は。
「…す、少し休憩しない?」
「そうだな」
「じゃあオレ飲み物買ってくる!2人共コーラで良い?」
高尾の言葉に頷くと、彼は先程自販機を見た方向へ駆けていく。
そんな彼の後ろ姿を緑間となんとなく見つめていると、突然下半身に衝撃を感じた。
「?!」
「わっ」
どうやら少年が走っていたのにぶつかったらしい。
まだ幼いその身長に合わせて屈み、怪我がないか確認すると少年はこくりと頷いた。
1人のように思えたため家族の居場所を聞いてみたところ、遊園地ではよくある出来事が発生しているのだとわかった。
「オレ…迷子になった」
涙をこらえようと唇を噛みしめる少年の目は不安に揺れている。
どうしようかと緑間に視線を向けると、彼は迷いなく少年を掲げ上げて肩車をした。
「いくのだよ、ここから母親をさがせ」
「っ!……うん!!」
緑間の優しさと合わせて、普段見ることのない高いところからの景色に少年は嬉しそうに声を上げる。
その声を聞いた緑間の表情も和らぎ、その顔を見た私もつられて破顔した。
そんな幸せな循環を暫く続けて、少年の母親が現れたのはそれから数十分後。
満面の笑顔でこちらに手を振りながら去っていく。
そんな少年を優しく見つめている緑間の横顔に、ふと目を奪われた。
そんな顔もするんだ。
初めて知る彼の新たな表情に少し胸が波打つ。
「さて、高尾が待っている、戻るぞ」
「あ、うん!」
いつもの表情に戻ってしまったことを寂しく思いながら、私は彼の後を追いかけた。
しかし流石休日の遊園地。
人の多さは尋常ではない。
このままでは緑間を見失う、そう思った時。
