第11章 ヤキモチ焼きな旦那様【火神】
ソワソワと落ち着きがない悠をたしなめるも、落ち着きがないのは私も同様なのであまり強くは言えない。
結果2人で家の中をウロウロとしていたその時、家のチャイムがなった。
「!パパ!」
「っ、!」
一目散に玄関へ駆けていき、大我の胸に飛び込むのは悠の方が速かった。
突然抱きつかれて受け身の体勢じゃなかっただろうに、彼を軽々と受け止めた大我は満面の笑みで息子との再会を喜ぶ。
「よぅ、元気だったか悠!」
「もちろん!パパ遊ぼ!」
「あぁいいぜ!…その前に」
やはり父親というものは息子にとって大きな存在なのだろう。
大我の前での悠は私の前にいる時と全く違う表情を見せる。
その光景を微笑ましく眺めていると、不意に悠を降ろした大我がこちらに向かってきた。
「ただいま、理央奈」
「…おかえりなさい、パパ」
額に降ってくる優しいキス。
そこからじんわりと伝わる彼の温もりに大我の存在を実感し、私も笑顔を返した。
「試合見てたよ、悠と」
「うわ、見られてたのかよ…俺のあのプレイ」
「ふふっ…力一杯ダンクしたお陰でゴールが壊れかけたね」
「あの後監督にどやされてよ…」
抱き寄せてくる大我の身体に寄りかかり、近況報告をし合う
いつもこうだった。
離れていた分を埋めるように、帰ってきてすぐはこうして私をそばにいさせてくれる。
その間悠は蚊帳の外だが、大我に貰ったお土産に夢中でこちらのことなんか御構い無しだったため問題なかった。
この間までは。
くいっと引かれる服の袖によって大我との距離が少し空く。
こんなことするのは悠しかおらず、いつもと違う彼の様子に何事かと声をかけてみると、彼は至極真面目な顔でこう言った。
「ママ取っちゃやだ」
「……は?」
「パパだけのママじゃないもん、オレのママだもん!」
「なっ…!」
突然の発言に大我も私も理解が追いつかない。
悠は強引に私を大我から引っぺがすと抱きついてきた。
「どうしたの、悠?折角パパ帰ってきたのに」
「……パパ好きだけど、ママ独り占めはやなの」
ぎゅうっと首にしがみつく彼の背中をあやす意味を込めて優しく叩いてやる。
その様子を見ていた大我が少し悔しそうだったのが可笑しくて、笑ってしまった。