第11章 ヤキモチ焼きな旦那様【火神】
「ママー!」
「悠、幼稚園楽しかった?」
「うん!オレ鬼ごっこで捕まらなかったんだ!」
「あら、凄いじゃない!悠はパパに似てスポーツ万能になりそうね」
幼稚園からの帰り道。
隣を歩く息子は今日あったことを目を輝かせながら話す。
その小さな歩幅に合わせて身を屈めながら話す時間が好きだ。
大我と結婚し、苗字が火神となってから早7年が過ぎた。
悠が生まれて、育児に追われるようになって、途端に忙しくなった毎日だけど不思議と辛くはない。
彼と自分の子供が今この世に存在していることが、どうしようもなく嬉しかった。
「パパは?」
「今日は早く帰ってくるって、だから一緒に夕ご飯の支度しようね」
「うん、そしたらパパに遊んでもらう!」
大我はプロバスケットボールプレイヤーとして世界を相手に戦っている。
本当は子供が生まれた時に引退しようかと思っていたらしいけれど、それは私が許さなかった。
家族のために夢を犠牲にしてほしくない。
家族を糧に夢を突き進んで欲しい。
そしていつか、子供の前で格好良い姿を見せてくれと、頼んだのだ。
だから彼は今アメリカのチームに所属していたのだが、今は日本に帰ってきている。
久しぶりの父親との再会に悠も朝からはしゃいでいた。
かくいう私も、彼に会える日を指折り数えて待っていた。
会いたいよ、大我。
一刻も早く抱きしめてほしくて、悠が着いてこれる最大のスピードで、家路を急いだ。