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短編集【黒子のバスケ】

第4章 その笑顔が好き【火神】


こんなにも彼の動作に一喜一憂している私を誰かどうにかして下さい。

「あれ、九条」
「火神…部活終わり?お疲れ様」

おう、と返事をする彼はシャワーを浴びてまだ乾いていないのか髪が若干湿っていた。
なんとなく流れで一緒に校門まで歩いていると、彼が私の名を呼んで立ち止まる。

「どうしたの?」
「あの、よ…お前今日暇か?」
「…ひ、暇だけど…」

ちょっと照れたように頬を染めながら尋ねてくる彼の質問の意図がよくわからないまま返事をする。
何か付き合ってほしい買い物があるのだろうか。

火神の次の一言は私の予想をはるかに超えたもので。

「今日、俺ん家で飯食ってかね?今日のお礼に、俺飯作るからさ」
「火神が、ご飯を…?」

勢いよく首を縦に振りそうになったがなんとか抑えて、コクコクと小刻みに頷いた。
彼はホッとしたように笑うと再度歩き出す。

「火神、料理するんだ?」
「まぁ1人暮らしだしな、結構得意だぜ」

そんな他愛もない話をしながらも本当は緊張で今にも倒れそうだ。
彼と食事が出来るなんて思ってもいなかった。

しかもクッキーのお礼に料理をしてくれるとは。
その律儀さもまた彼の魅力なのだろう。

「九条も結構するのか、料理」
「うちは親が共働きだから。妹のご飯も作るし」

そういえば妹の夕食はどうしようか。
冷蔵庫の中に確か冷やし中華があった気がするからそれを食べてもらおうと連絡をしておく。

そうこうしている間に火神の自宅に着く。
中に入ってみると、1人暮らしにしては広い部屋だった。
それなりに片付いていて意外に思ったことは彼には内緒である。

適当に座っててくれと言われて大人しくソファに座っていると、ある写真が目に入った。
そこに写っていたのは金髪の綺麗な女の人と泣き黒子が印象的な少年、そして…

「これ、火神?!」
「は?…うわ、見んな!」

見てすぐに分かった。
赤い髪の闘志むき出しな少年、それはどこからどう見ても火神で。

恥ずかしいのか料理を中断して取り上げに来る彼の手を避け、その写真を見る。

「可愛いね、昔の火神」
「っ、うるせぇな!いいから返せ!」

からかうと顔を真っ赤にした火神は何が何でも取り返そうとしている。

そんな彼から逃げるように後ろに下がった私は何かを踏んでバランスを崩した。

「っ、?!」
「九条!!」
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