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短編集【黒子のバスケ】

第3章 シロツメクサ〜約束〜【青峰】


*青峰視点*

今日俺は小学6年、最高学年に進級した。
クラスは5年の時と変わらないので自己紹介もなく、始業式だけで初日は終わる。

解散の号令がかかるとすぐ、俺はランドセルを引っつかんで教室を飛び出した。

「大ちゃん?!」
「ワリィ、先帰る!」

さつきに別れを告げれば一気に階段を駆け下り、靴を履き替えて外に走り出す。

向かうは理央奈の家。

アイツは高校生になるが、入学式は明日だということで今日は家にいるらしい。
そう母親から聞いてからずっと決めていた。
約束を、果たしてもらおうと。

「今日は何すっかな」

走りながら今日の予定を立てる。
この間は自分ばかり遊んでいて、アイツは冠を作っていたから、2人で何かをしたい。

以前体育でやったバスケなんか面白くていいかもしれない、そう思いつくともういてもたってもいられなくて、走るスピードを上げた。

おかげで理央奈の家に着く頃には汗だくで、息も絶え絶えだった。
どうにか息を整えると力一杯インターホンを押す。

本当はそんな強く押さなくてもいいのだが力が入ってしまったのだ。
それだけ楽しみなのだから仕方ない。

家から出てきたのはアイツの母親だった。

「あら、大輝くんどうしたの?」
「おばさん!理央奈は?」

その時だった。
おばさんは困ったように眉を下げた。
そして俺と目線を合わせるように跪くと、こう言ったのだ。

「ごめんね、大輝くん。理央奈はもういないの」

頭の中が、真っ白になった。













*理央奈視点*

大輝やさつきちゃんの始業式の日の朝。
私は母親と駅のホームにいた。

「まさか高校生で家から出すとは思わなかったわ」
「あはは、ごめんねお母さん」

志望していた高校への合格。
それが決まった時からこの日が来ることは知っていた。
私が志望したのは東北の高校だったから。

「皆によろしくね、元気で」
「一人前になって帰ってきなさい」

皆と言いながら脳裏に少年が蘇る。
シロツメクサの花言葉には"約束"以外にもあることを彼はいつか知るのだろうか。
私がいなくなって、彼は泣くだろうか。

泣けばいい、そしたら忘れない。

私が"約束"を果たしに行くその日まで、"私を思って"いればいい。

「元気で…大輝」

決して届かない言葉は、風にかき消えた。
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