第3章 シロツメクサ〜約束〜【青峰】
*青峰視点*
あれから、3年が過ぎた。
あの時、理央奈が家を出たと聞いたときはショックだった。
涙が止まらなくて、人目もはばからずに泣いた。
さつきが来て俺を連れ帰らなかったら、俺はいつまでもあそこで泣いていただろう。
近所に住んでた年上の理央奈。
昔から暇があればアイツの家に行ってお菓子をもらっていた。
さつきがいたときは時々さつきが無理やり理央奈を誘って、3人で遊んだ。
そんな日々は楽しくて、終わるなんて思ってもいなくて。
いなくなる前日でさえも、そんな素振り少しもなかった。
それからも約束は守られることなく、俺は高校生となる。
あの時のアイツに年が追いついてしまったのだった。
夏休みくらい実家に帰ってくるだろうと思ったけれどそれもなく。
理央奈の両親も海外に行ってしまい、俺は完全にアイツの近況を知る術を失っていた。
「青峰くん」
「…んだよ、さつきかよ」
「文句でもあるの?…もう、明日から高校生なんだから少しは真面目に練習したら?」
「したってしょうがねぇだろ…俺に勝てるのは、俺だけだ」
さつきの忠告も無視してあてもなく歩く。
ふと気がつくと昔理央奈と来た公園の前を通りかかっていた。
そこそこの広さを持つそこは、今でも子供達がよく遊ぶ場だが、夕方である今は誰もいない。
「シロツメクサは、もうねぇんだな」
何も変わっていないようだが、1つだけある変わった点がそれだった。
シロツメクサが生えていた花壇は子供用の遊具を新しく作るためになくなった。
アイツとの思い出も消えてしまう。
俺はもう二度と、会うことはないのだろうか。
お菓子をもらうなんて口実だった。
幼少期は年上に憧れるとよく聞くがまさにそれだ、それがそのまま恋心へと発展しただけ。
「理央奈…」
今もまだ好きかどうかは分からない。
それを知るためにも、アイツに会いたかった。
呟いた言葉は誰に聞こえるともなく消える。
はずだった。
「呼んだ?」
後ろから聞こえる声。
それは懐かしい声、求めていた声。
振り返ればそこにはアイツがいた。
君がもう高校生だなんて、驚いた。
そう言って笑う彼女は昔より綺麗で。
言葉の出ない俺のそばまで歩いてきた理央奈は目を細めて俺の頬を撫でる。
「約束を、果たしに来たよ…大輝」