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短編集【黒子のバスケ】

第3章 シロツメクサ〜約束〜【青峰】


「シロツメ…?クローバーじゃねぇのか、これ」
「そうだよ。シロツメクサとも言うの。花言葉はね…」

言いかけた言葉は風に掻き消された。
なびく髪を軽く押さえながら立ち上がる。
空は少しずつ赤く染まり始めていて、そろそろ彼との時間が終わりだということを示していた。

「……帰ろうか、少年」
「…、おい…」

これ以上遊ぶのは難しいと判断すると彼を促して歩き出す。
と、服の袖を大輝に掴まれてそれは叶わなかった。

どうした、と訊ねてみれば相手は俯いたままポツリと呟く。

「花言葉…」

たったそれだけの言葉だったけど、
言いたいことはすぐに分かった。

「約束」
「約束…」

花言葉の1つを告げると大輝はパッと顔を上げる。

「じゃあ、また遊ぼうぜ!2人で!」

約束!と頭に乗せられた冠を掲げる彼に驚くも、その気持ちが嬉しくて、近付いて微笑む。

「うん、約束ね……大輝」
「!!」

名を呼んでやると彼は心底嬉しそうに笑顔を浮かべた。
その後2人で手を繋ぎながら帰宅すると、彼の家の前ではさつきちゃんが買ったものと思われる新しい服を持って待っていて。

2人仲良く服と冠を見せ合いながら話す様子は微笑ましい。
ほんの少しだけ羨ましかった思いも、今はあまりない。
小学生に張り合うのもどうかと思うが、それでも今の私と大輝にはさつきちゃんの知らない"約束"がある。

それだけで、満足できた。

私も帰ろうと背を向けると後ろから飛んでくる声。

「花言葉!忘れんなよ理央奈!」

その言葉に手を振り返して、

「年上を呼び捨てにするなんて生意気だよ、大輝」

歩き出した。
内心で、彼に謝罪しながら。
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