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短編集【黒子のバスケ】

第3章 シロツメクサ〜約束〜【青峰】


「姉ちゃん、菓子くれ!」
「もー、大ちゃんってば礼儀正しくしないとダメだよ?」

ほら、今日もいつもと同じ時間に彼らはやって来て。
私…正確にはこの家の誰かに菓子をねだる。
要は私でなくとも良いのだ。
そんな繋がってるようで繋がってない私達の関係が、最近は少し寂しく感じてしまう。

「今までそんなことなかったのに…」

お菓子を渡して、走っていく2人を見送りながらそう呟いた。

「大輝君とさつきちゃんは小学6年生、貴女は高校生になるなんて…早いわね」
「ん…そうだね」

母の言葉から出会った頃を思い出す。
私達が越してきたとき彼らはまだ3、4歳だった。
それが来年度、というか数日後には小学6年、12歳になるのだから時が流れるのは早い。

きっと彼らが高校生になるときも、私は同じことを思うのだろう
そして羨ましくなるのだ。

彼の隣にいる彼女が。

「…何を考えてるんだか」

自室にある段ボールの箱の数々。
それらを見ながらふと思い浮かんだ思いを打ち消すため、再びその箱に私物をいれ始めた。

「姉ちゃん、菓子!」
「……昼もあげたし、だめ」

その後日が沈んだ頃に彼は再びやって来て、私に菓子をねだってきた。
しかしこの時間帯に菓子を与えてしまっては夕食にも影響を及ぼすかも知れなくて、流石にそれは彼のご両親に申し訳ない。

「ケチ臭いこと言うなよ」
「あんたこそバカ言ってんじゃないの、それよりさつきちゃんは?」

子供らしい悪態のつきかたに笑ってしまうも、いつも近くにいたはずの少女が見当たらないことに気づく。

「さつきは新しい服買いにいった」
「へぇ…あんたは良いの?」
「俺いらねぇし…暇なんだよ姉ちゃん、なんかねーの?」

しっかり者の幼馴染みがいなければ1人で時間を潰すことすらできない少年。
そんな不器用さも、それを見せない気丈さも、子供なりの背伸びで、可愛らしく感じられる。

「良いじゃないの理央奈、遊んであげたら」

母が挟んだ言葉の真意を私は知っていた。
だからこそ、首を横に振ることなどできなくて。

「行こうか、少年」
「少年じゃねー、大輝だ!」

私は少年…否、大輝の手をとって歩き出した。
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