第9章 甘い誘惑 ~初めての○○~
勢いよく引っ張られて、近くの公園までやって来ていた。
繋がれた手を振り払う奈帆。
「久しぶりのダッシュ。。。キツいわー!!」
倉持がハァハァ言いながら話し始めた。
いきなり走らされて機嫌が悪い奈帆は
「なんのつもりですか?私は一弥を待っていたのに!!失礼します!」
来た道を戻ろうとするといきなり後ろから抱きしめられる。
ゆっくりと倉持の声が耳元で
「奪って。。。みた。。。」
少し息が切れているせいで、奈帆の耳に息がかかる。
「奪われてませんから!」
背中から伝わる倉持の鼓動から離れたくて腕を突き放す。
しかし動いた拍子にくるりと倉持の方を向かされ頭を押さえ込まれながら倉持の顔が近付いた。
「ん。。。」
奈帆が言葉を発する前に口を塞ぐ倉持。
力強い倉持の手を振り払えず、奈帆は倉持の唇を噛んでしまった。
「痛ーな!あーぁ血が出てやがる。」
唇を指で拭いながら奈帆を睨む。
「いきなりそんなことするからです!サイテー!!」
奈帆が帰ろうとすると腕を掴まれ
「これで一弥に秘密ができた?2人だけの。。。諦めねーから。」
多分全部言い終わって無いのは解ったが奈帆は勢いよく走りだした。
少し走った所で唇をハンカチで拭う。
(なんなの!!)
いつしか目から涙が流れていた。
ぐっと堪えながら家の前に着くと一弥が立っていた。
涙目の奈帆を見て駆け寄る。
「どうした?先に帰ってると思ったけど、部屋に電気付いてねーし!何があった?」
ゆっくりと抱きしめる一弥の腕が奈帆は辛かった。
涙は止めどなく流れる。
しかし奈帆は
「大丈夫だから、今日は。。。帰って。。。」
そう言って一弥の腕から奈帆は離れ家に入った。
(一弥に話せばまた言い争いになる。次の試合まで。。。)
奈帆は流れる涙と共に唇をぐっと噛み締めた。
その夜、何度も一弥から連絡があったが返すことは出来なかった。。。