第9章 甘い誘惑 ~初めての○○~
夕暮れの中、無言で歩く一弥と奈帆。
どこからか太鼓と笛の音が響いてきた。
小さな神社のお祭りに奈帆は
「お祭りだぁ。。。久しぶりに見たかも。。。」
沈黙をボソッと破る。
「よし!出店見てこーぜ!」
一弥の明るい声が耳に入ると繋いだ手を引っ張る。
神社までの細く長い道に出店がずらっと並んでいた。
「何かたべるか?」
一弥が奈帆に聞くと
「う~ん。。。どうする?」
悩んでいた奈帆だったが言い終わるとお腹が大きな音で鳴った。
2人は爆笑しながらたこ焼き屋に並ぶ。
恥ずかしさをこらえながらまた鳴るんじゃないかと不安な奈帆。
「つか、昼たべたか?遊んでてたべなかったんだろ~?」
一弥が少し笑いながら話すが、その瞳はどこか寂しげだった。
たこ焼きを買い出店の裏に移動する。
すると一弥がたこ焼きを奈帆の口へ運ぶ。
「ほら。。。先に食えよ。。。」
更に恥ずかしさで顔が赤くなりながら食べる。
あまりの熱さにハフハフしている奈帆を見て爆笑する一弥。
ようやくさっきまでの沈黙がうそのように2人の顔は少し緩んだ。
「おいひぃ。。。」
上手く喋れない奈帆にお腹を抱えながら笑う。
食べ終えると奈帆は笑われた事に少しすねる。
「ゴメン、ゴメン。。。あまりにも可愛くって。。。」
そう言って一弥が奈帆のおでこにキスをする。
「こ、こんな所で!!?」
奈帆が赤くなりながら一弥を突き放す。
すると真面目な顔で一弥が
「イヤか?」
真剣な眼差しに釘付けになる。
奈帆は無意識に首を横に振る。
ゆっくりと一弥の顔が近くなり奈帆は瞼を閉じた。
柔らかく暖かな感触に身体の力が抜ける。
離れては触れ段々激しくなるキスに奈帆の身体は動か無くなった。
「今日も。。。俺んち泊まってけよ。。。離れたくないから。。。」
キスの間に話す言葉を理解するも立っているのが精一杯だった。
2人は出店を回る。
繋がれた手からお互いの気持ちを伝え合うかのようで、言葉は少ないがどこか安心していた。
駅から電車に乗り一弥の家の駅で無理矢理降ろされ、手を引っ張るように歩き出す一弥。
少し緊張していたせいか、奈帆は歩く野がやっとだった。