第9章 甘い誘惑 ~初めての○○~
日曜日に遊園地に行く約束をしてから全く一弥と話す機会が無くなっていた。
その変わり倉持が奈帆に纏わり付く日々。
登校から下校まで一弥よりも一緒にいる時間が多くなっていたが、雅也に何度も救われていた。
翌日に遊園地を控えて、奈帆は思い切って一弥に声を掛けた。
「一弥先輩、ちょっといいですか?」
2人が部室へ入ると一弥から
「ごめんな、ちょっと忙しくて。何かあった?」
ソワソワしながら話し始める一弥に
「明日ね、めぐと遊園地行ってくるね。伝えておこうと思って。。。」
安心したのか、一弥は身体の力が抜けた。
「焦った。。。別れるとか言われるかと。。。思った。。。」
ゆっくりと奈帆を抱きしめる一弥。
「うん。どうしても直接言いたかったから。。。それと。。。」
言葉が言い終わらないうちに一弥の唇が口をふさぐ。
「明日は楽しんでこいよ!時間が空いたら連絡くれ。迎えに行くから。。。てか、なんか言いかけたけど?」
奈帆の頭を撫でながら聞き返す。
「ううん、何でもないよ。」
本当は倉持の事を話そうとしたが、一弥の負担になりたくなかった奈帆はぐっとこらえた。
「そっか。。。よし、部活に戻るぞ!!っとその前に充電。。。」
そう言って甘いキスを落とした。
日曜日、待ち合わせの場所に向かうとみんなはもう集まっていた。
「ゴメン。。。私最後だ。。。」
ゆっくりと話す奈帆に3人は笑う。
「たまたま雅也くんが送ってくれる事になったみたいだから大丈夫だよ!」
みんなで雅也の車に乗り込むと車は遊園地へ向かった。
絶叫からお化け屋敷、コーヒーカップにメリーゴーランド。。。
ありとあらゆるものに乗るが、秀明とめぐはいつも一緒の為、雅也が隣になることが多かった。
しかし言葉が少ない雅也に不安を抱く奈帆。
夕焼けに染まった空を見て雅也が、
「観覧車乗ろうぜ!」
久々に聞いた雅也の声にビクッとなりながら4人は観覧車へ並んだ。
いよいよ順番が来て秀明とめぐが乗り込むと雅也が、
「2人で乗ってこいよ!俺ら次の次に乗るから。」
秀明に気を遣ったのか別々に観覧車に乗り込んだ。