
第9章 甘い誘惑 ~初めての○○~

突然の出来事に勢いよく振り払い駅に逃げ込む奈帆。
走り去る後ろ姿をみながら、
「へぇ~、意外と照れ屋なんだね~。」
振り払われた手を見ながら静かに笑う倉持。
駅で電車を待っていると反対側のホームで冷たい目線を送ってくる雅也が見えた。
しかし、すぐに電車が来て奈帆はそのまま乗り込んだ。朝、携帯の呼び出し音で目覚めると一弥から電話が鳴っていた。
「おはよう。起きたか-?今日は早く行くから一緒に行けねーから、昼休みに部室で飯食わね?」
寝ぼけているせいか、理解するまで時間が掛かる奈帆。
何とか一弥の言いたい事を理解して返事をする。
(久々だな。。。1人で登校。。。)
そう思いながら歩いていると後ろから勢いよくやって来た倉持が奈帆の肩を抱く。
「あれ~?一弥は?」
奈帆の身体を自分に寄せながら何気なく話してくる。
「離して下さい!一弥先輩は部活の用事で早く行きました!」
奈帆が肩の手を避けて離れると
「部活の用事ね~?なんかやることあったっけ~?」
意味深に話す倉持。
しかし、奈帆の不安気な表情を見て。
「そんな顔しないの。。。かわいいお顔が台無しだよ?マネージャー!」
そう言いながら奈帆の頬を優しく触る倉持。スキンシップの多い倉持を睨みつけると後ろから、
「おいっ!さっさと教室いくぞ!!」
雅也が強引に奈帆の手を摑み足早に学校へ入って行った。
いつしか手は離され雅也の背中が奈帆の前にある。
「あ、の。。。ありがと。。。」
雅也に聞こえるくらいの小さな声で話すと、雅也は何も言わず教室へ入って行った。
教室では秀明とめぐが何やら楽しそうに話していた。
「奈帆~!おはよ~!あのね、日曜日暇かな?」
めぐは目をキラキラさせながら話す。
「どうしたの?」
朝からテンションの高い事にびっくりしながら聞くと、
「じゃ~ん!昨日お母さんが遊園地のチケット貰っの~!4人分あるから奈帆も行こ~?」
久々のめぐの誘いに嬉しくなる。
「日曜日は練習無いから大丈夫だよ。」
奈帆が答えると
「やった~!久々だね~!ってあと1人誰がいいかな~?一弥先輩誘う?」
めぐの突然の申し出だったが、
「多分、一弥先輩は忙しいから無理かな。。。」
奈帆が考えながら話すと
「じゃあ、俺が行ってやるよ!」
話しを聞いていた雅也が最後の1枚のチケットを取った。
「じゃあ決まり~!日曜日楽しみ~」
奈帆は少し不安だった。
