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私はSですが?何か?①

第8章 夏の大会 ~すれちがいの日々~


ベッドに横になるが全く眠れず朝日がカーテンの隙間から漏れてきた。
隣の部屋のドアの音がして奈帆は息を潜める。
(もう。。。朝の練習の時間か。。。)
雅也が出て行ったのを確認すると早々と着替え荷物を持つ。
昨日の今日で顔を合わせずらかった奈帆は雅也が練習している間に帰ろうと決めていた。
廊下を歩くと次第にボールを蹴る音が大きくなる。
突き当たりの窓に引き寄せられ下を覗くと清々しい顔の雅也がいた。
しかし、清々しい顔とは逆にボールの扱いは荒々しかった。
「おはようございます。奈帆様。もうお帰りですか?

後ろから藤堂が奈帆の姿を見て目を丸くしていた。
「はい。雅也くんに会わないでそのまま学校へ行こうと思って。。。」
奈帆が雅也を見ながら話すと
「それでしたら、朝食は私の部屋でお食べになられてはいかがですか?すぐに用意いたしますので。その後に別の車でお送りいたします。雅也様には内緒で。」
藤堂の提案にびっくりした奈帆は少し困っていた。
「でも、藤堂さんにお世話になりっぱなしで。。。」
話しの途中で藤堂が
「まずはここに居ては見つかります。こちらへどうぞ。」
そう言って奈帆を部屋に案内する。
初めて入る執事の部屋。アンティークで統一された柔らかい部屋の雰囲気に奈帆は
「藤堂さんの雰囲気とぴったりですね。包み込むような優しさが溢れて。。。」
ソファーに腰を下ろしながら話すと
「古い物にはたくさんの歴史があります。人の喜びや悲しみを一緒に生きてきた家具ならではの味があります。今、朝食を運んで参りますので少しゆっくりしていて下さい。」
そう言いながら部屋を出る藤堂。
すると廊下をドタバタと走る音が聞こえ
「藤堂!奈帆は?」
息を切らした雅也が藤堂に訪ねる。
(どうか。。。バレないで。。。)
奈帆はドキドキしながらドアの向こう側に耳を傾ける。
「先ほど自宅に寄ってから学校へ行くとの事でしたのでお帰りになりました。」
冷静に話す藤堂に胸をなで下ろす奈帆。
すると雅也が
「そうか。。。」
納得いかないような返事に
「それでは朝食の用意をしたします。」
藤堂が食堂へ歩き始める。
廊下に残された雅也が
「そんなに俺が嫌かよ。。。顔も見たくないくらいに。。。」
雅也がつぶやく。
(違う。。。でも今は。。。)
奈帆は雅也の姿を見ていなかったが、脳裏に雅也の姿がはっきり浮かんだ。
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