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私はSですが?何か?①

第8章 夏の大会 ~すれちがいの日々~


2枚のトランプを見せながら不適な笑みを浮かべる雅也。
奈帆は起き上がり髪を直しながら
「はいはい!勝ちですね。で、バツゲームは何?」
そう言いながら雅也を見ると切なさが溢れんばかりの眼差しで
「本当の気持ちが知りたい。。。オマエの。。。」
優しい手が奈帆の頬を撫でる。
「てか、ほ、本当の気持ちって何?」
奈帆が下を向きながら話すと
「俺と一弥先輩。。。どっちが好き?」
1番聞かれたく無い事が頭を駆けめぐった。
「ん~。分かんないよ!まだ。。。」
ちょっと勢いよく答えると
「じゃあ。。。確かめる?」
雅也の顔が奈帆を覗き込みながら近づいてきた。
「ま、待って。。。てか、ダメ。。。」
横に顔を背ける奈帆。
しかし雅也は顎を指で持ち上げ
「もぅ。。。待たねーよ。。。」
そう言って柔らかい感触が奈帆の唇に伝わった。
ゆっくりと唇が離れて雅也は奈帆を抱きしめる。
「合宿の時。。。最後の夜のあの顔を見た時。。。決めたんだ。。。奈帆にあんな顔させたくないって。。。だから俺と一緒に居ろよ。。。」
雅也の真剣な言葉に胸がドキドキする。
しかし奈帆は。。。
「ごめん。。。私。。。」
そう言って雅也を振り切って部屋を飛び出した。
ドアの前で立ちすくむ奈帆。
心臓だけが高く鳴っていた。
「奈帆様、どうかなさいましたか?」
藤堂さんが飲み物を持ちながら近づいてきた。
「いえ、もう寝ようかな。。。って。。。」
奈帆は高鳴る鼓動を落ち着かせるように話すと
「ではこちらのお部屋へどうぞ。ハーブティーを持ってまいりましたので。」
藤堂はドアを開け奈帆を部屋へ案内する。
柔らかいハーブの香りが部屋の中に漂った。
「ハーブティーは心が落ち着きます。安眠の効果もございますよ。」
奈帆をソファーに座らせて前にティーカップを置くと。
「雅也様は奈帆様といると生き生きして見えます。しかし、悩んでおられるようでした。今の奈帆様も同じ顔をしておられます。ゆっくりと身体をお休めください。」
そう言って藤堂は部屋から出て行った。
ティーカップを手にして1口飲むとじんわり温かい舌触りと共に大粒の涙がこぼれ落ちた。
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