第9章 甘い誘惑 ~初めての○○~
学校までの道。他の生徒に混じって手を繫ぎながら歩く2人。
すると後ろから
「おーっす!一弥!」
聞き覚えのある声に奈帆はビクッとした。
「倉持。。。相変わらず元気だな!」
一弥が話すと奈帆はサッと手を離した。
すると、倉持が
「あれ?さっきまで手繫いでなかった?俺に気を使うこと無いのに~、それとも昨日の事話したのか?奈帆。。。」
一弥と昨日話したはずの倉持が奈帆の肩を抱く。
「昨日って?なんかあったのか?つか、倉持!俺の彼女に軽々しく触れるな!!」
倉持を睨みつけながら奈帆を自分の方に寄せようとすると更に強い力で倉持が奈帆を離さない。
「一弥、悪ぃな~。昨日も奈帆に話したけど、俺。。。コイツお前から貰うから!!」
2人の睨みつける目線の先で火花が散る。
いてもたってもいられなくなった奈帆は
「明日は試合!そんな事で争ってる場合?もう知りませんから。」
2人に吐き捨てるように言葉を発すると奈帆は走って行ってしまった。
残された2人に気まずい空気が流れた。
夕方、いつもなら部活に行く時間だったが奈帆は屋上にいた。
ぼんやり空を眺めていると
「サボリか?何なら俺んとこ来てもいーんだけどな~」
振り返ると雅弥が立っていた。
「また、そんな事言って。。。てか貴方こそ部活でしょ!」
奈帆がまた空を眺めると雅弥が隣に座り
「なんか、1日中元気ねーし、何となく足がここに向かってた。。。」
雅弥なりの心配した気持ちが伝わる奈帆。
「そっか~、私、マネージャー辞めようかと思って。。。」
奈帆は目を合わせずに話す。
「朝、お前ら3人でもめてたって秀明に聞いた。それでか。。。」
雅弥の優しい声が奈帆の目を熱くする。
「まぁね~、明日は試合なんだけどね~」
涙を堪えるように話すと
「そんな簡単な事なのか?俺を断ったくせに!いーかげんにしろよ!はっきり一弥先輩を頼ればいーだけだろう!!」
怒りの声にびっくりして雅弥を見ると、奈帆と同じように目が赤くなっていた。