第1章 森の中で
金色の彗星が森を駆ける。翔ける。駈ける。
木々を跨ぎ、蹴り、疾駆する。
そして地面に音もなく着地した彗星は木々のこぼれ陽とその姿を斑点の影とともに森の中に映し出した。
その金色の毛はこぼれ陽によって黄金に煌めきフサフサとした髪の毛からちょっぴり丸まった獣耳が生えていた。
背丈はあまり大きくなく150cmあるかないかだろう。
その少年は体躯から予想出来るようにヒョコヒョコと歩き出した。
しばらくして森のひらけた場所に出ると少年の容姿が顕になった。
その顔は可愛いと言えるような童顔だった。そして森の中では完全に金色に見えた毛はちょっぴり毛先が黒くなっているのがわかった。
少年は太陽のしたに出ると腕をあげて数秒、大きく伸びをしたあと。
「~〜~~ッん、と。うん、帰ろっかな」
そして少年が跳躍のためにはいると同時に森の中に蠢く影を確認した。
少年は目の上に手を翳し目を凝らした。
「....んーと、兎、かな?....よし、おじさんにお土産として持ってこっと」
そしてダッシュして手掴みで取るのかと思いきや、少年は何やら呟き始めた。
「風よ風、我の願いに応えよ、されど影を射抜けん矢尻となれ」
そう言い、手を影の方へ振る。同時に風が吹き抜けて断末魔の悲鳴が少年の耳に届いた。
少年は手をおろしてトコトコとその悲鳴の元に向かった。
そこには矢で貫通されたような傷のついた野ウサギが倒れていた。
「やたっ、今日は兎の鍋だっ」
少年はそう言って野ウサギの耳を掴み梢の中に姿を消した。