第2章 婚約者とか、実在するんだな
『確かに、両家の利益には繋がるかも知れない。
でも、勝手に話を進められても困りますし、何より、婚約させられるのは私達です。
私達の意見もしっかり聞くのが筋でしょう?』
皮肉たっぷりにそう言うと、お父さんは明らかにイラついたのがわかった。
だからと言ってどうもするつもりはない。
私だけならまだいい。
でも今回は征くんの未来もかかってくるのだ。
私が引いて征くんに迷惑がかかるのだけは避けなくては。
橙父
「お前の意見というのはなんだ。
…言っておくが、婚約の話は無しにするつもりはないぞ」
いつもは大人しく言う事を聞いている私が、全く意見を変えないのを見て、お父さんは少し弱気になったのか、私にそう言ってきた。
それだけでも充分な収穫だ。
『私は、征くんと婚約しても構いません。
でも、征くんは嫌かも知れないし、将来的に色々問題が出てくるかも知れない。
だから…世間に公表せず、何かあったらいつでも解消出来る…「仮婚約」とするなら、私は今回の話を飲みます』