第2章 婚約者とか、実在するんだな
橙父
「まあまあ、落ち着いてください赤司さん。
征十郎くんも急に言われたから驚いているだけですよ」
赤司
「ちがう!」
橙父
「征十郎くんもそんなこと言わずに。
聞けば征十郎くんと楓は知り合いなんだろう?
赤の他人と婚約させられるわけでもないし、別にいいじゃないか。
…ほら、楓も何か言いなさい」
ひどい言いようだった。我が親ながら恥ずかしい。
征くんの気持ちを決めつけて、自分の希望を押し通す事しか考えてないのがバレバレだ。
こんなに自分の心を隠すのが下手くそなのに、会社の社長を務めてるなんて、世の中はおかしい。
いつもなら飲み込む思いも、今日は我慢出来なかった。
『…結局自分の利益しか考えてない人間の言うこと、聞きたいと思いますか?』
橙父
「なんだと?」