第5章 帝光祭、開幕!
『うう…』
赤司
「ほら、似合ってるんだから、いい加減しゃんとしろ」
いよいよ本番直前。
私は舞台袖で固まっていた。
征の言ったとおり、私と鈴木のサイズはほとんど同じで、結局私が代役をすることになった。
昨日は試着が終わってからはずっとジャージでやっていたから、なんとか劇は仕上がった…ように見えたんだが。
『やっぱりこれは…ちょっと、無理だ…』
女の子らしい清楚なドレス。
作ったのが自分だと言っても、着るとなったら話は別だ。
赤司
「俺が似合ってるって言ってるんだからいいじゃないか」
『そうだけど、でも恥ずかしいし』
赤司
「そんなこと言ったら、俺だってそうだ」
征は少し声を落としてそう言った。
『そうなのか?似合ってるのに』
赤司
「それは楓も同じだろ。
恥ずかしいものは恥ずかしいさ。
…でも、決まったことに文句を言うのはもっとカッコ悪いじゃないか」
『征…』
確かにそうだ。
…しょうがない、うじうじするのも私らしくないしな。
『わかった、精一杯やるよ』
私はふっきれてそう言った。
恥ずかしくなるのは終わってからで充分だ。
赤司
「…それでこそ楓だよ。
大丈夫、演技もセリフも問題ない。あとは度胸だけだ」
『もちろん。ここで負けたら女が廃る』
挑発的にニヤリと笑うと、征も小さく笑った。
──────さあ、劇の始まりだ。
私は皇帝にエスコートされながら、ライトの下へと出ていった。