第5章 帝光祭、開幕!
女子
「嘘、どうしよう…」
『どうしたんだ?』
帝光祭を前日に控えた日、クラスに行くと、女子たちがうろたえていた。
学園祭実行委員の佐藤に聞くと、なんでもヒロイン役の子が足を捻挫してしまって、劇に出られなくなってしまったというのだ。
『それは大変だな…』
話しながら、責任感が強く真面目な佐藤はポロポロと泣き出してしまったし、それに少しパニックになった私は頭がまわらない。
どうすればいいんだろう、ほとほと困り果てていたところに
赤司
「じゃあ、楓がやればいいんじゃないか?」
と皇帝姿の征が現れた。
急に来られるとカッコ良すぎてかえって心臓に悪いな…なんて考えながら私は返事をする。
『私が、か?』
赤司
「うん。楓はセリフも全部覚えてるし、鈴木(ヒロイン役だった子)とほとんどサイズも変わらない。
それに舞台映えも問題ないだろう?」
『でも私は劇なんて』
佐藤
「橙野さんなら大丈夫そう。
橙野さん、やってくれる?もちろん、無理にとは言わないから…」
佐藤は涙をふいてそう言った。
たとえふこうが、泣いた後はバッチリ残っているし、先ほど泣いているところも見てしまっているわけで…。
女の子が泣いて困っているのに、そしてそれを助けられるのが自分だけなのに、頷かないなんて選択肢は私にはなかった。