第2章 婚約者とか、実在するんだな
*征十郎side*
楓が家に入ったことを確認してから、征十郎はため息を吐いた。
赤司
「…鈍感楓」
自分の気持ちも知らずに、嬉しいことばかり言ってくる愛しいオレンジ色に、征十郎はいつもいっぱいいっぱいなのだ。
赤司
「まあ、そこも楓の良いところなんだけど」
誰もいない空間に、歩き出しながらそう一人ごちる。
あのクールで優しいオレンジ色の少女に、特別な感情を抱くようになったのは、いつだっただろうか。
覚えていないほど前からで…そしてもはや、当然の感情となってしまっている。
赤司
「俺の気持ちは変わらないよ。今も、そしてこれからも」
自分にしか聞こえない声で、征十郎はそっと呟いた。