第2章 婚約者とか、実在するんだな
赤司
「俺のことばっかり気遣ってるけど、逆に楓は本当に嫌じゃないの?ってこと」
そういう征くんは真剣で、いつもと違う顔つきをしていた。
『…そんな、ことな』
赤司
「本当?本当にそう言える?」
いつもと違った征くんの表情に驚き、思わずどもってしまった私に、征くんはさらに問い詰めてきた。
その目を見て、私は征くんも怯えていたことを知った。
不安気に揺れる瞳。縋りつくような視線。
いつもと同じように振舞っていてはいても、私と同じ立場の、同い年の男の子。
自分のことに精一杯で、征くんのことを考えていなかった。
…これでは、あの親と同じじゃないか。
もう怖がらない。
私は決意を固め、『上手く言えないけど』と前置きしてから、自分の考えを言葉にした。
『私は…急な話だったし、今までそんなこと考えたことなくて、良く分からない。
確かに戸惑いはあるし、征くんのこと、そういう風には…やっぱり見れない』
赤司
「…じゃあ、『でも!』」
『私は…嬉しいよ。だってこれで、征くんと、ずっと一緒にいられるってことだろう?』