第2章 婚約者とか、実在するんだな
翌日。朝、いつも通りに征くんと登校した。
授業を受けた。
部活をして、一緒に下校した。
正確に言うと、それまでとなんら変わらなかった。
確かに昨日、間違いなく私達は、「仮」とはいえ婚約者同士になったはずだ。
いくら相手が征くんだと言えど、正直私は、今朝から気恥ずかしくてしょうがなかった。
誤魔化すのに精一杯で、征くんとの会話にも気持ちが入っていなかったように思う。
いつもと全く同じ様子の征くんに対して、変に意識してしまって申し訳なく感じた。
『…征くん、今日はごめんな。いつもと同じに出来なくて』
赤司
「楓…?」
『征くんは全然大丈夫なのに、色々考えてしまって。
本当に、嫌だったらすぐやめていいんだぞ?
やっぱりこういうのは本人の気持ちが第一だと思うんだ。
まだ正式に発表とかもしてないんだし、うちのこととかも全然気にしなくていいからな』
帰り道、私は今日の非礼を詫びた。
喋っているうちにさらに恥ずかしくなって、自然と早口でまくし立ててしまった。
…そのため征くんの様子に気がつくのが遅れた。
赤司
「そうやって言うけど、楓は俺と婚約するの、嫌なの?」
『…え?』