第10章 黒子のバスケ/黄瀬 涼太
「ただいま!」
「わん!」
「ごめんね、掃除当番で…あ!ダメだよ!私今雨でびしょびしょだから…」
「わんわん!」
「あ、うん。散歩だよね、着替えるからちょっと待ってて」
「わん!」
リョータと一緒に暮らし始めてから3日が経った。私は学生のため平日の昼間は一緒居ることはできないが、できるだけ早く帰ってくることを心がけていた。
お昼ご飯は出掛ける前に用意しておき、自分で食べてもらうという、属にいうお留守番をしているのだがリョータは普通に良い子だった。
「お待たせ、それじゃあ行こうか」
「わん!」
「リョータは散歩好きだよね」
「わん!」
「運動が好きなんだね」
「わんわん!」
本当に嬉しそうに笑うリョータを撫でてから犬用のレインコートを着せて玄関へと歩き出し靴を履いた。
ここ数日晴れることはなく、残念なことに雨ばかりだが何故かリョータは毎日散歩に行きたがる。犬は雪だけじゃなく雨も好きなのだろうか。
「リョータは…1歳なんだっけ」
「わん」
「人間で言ったら…15歳位なんだよね」
「わん?」
「ん?私と同い年位かなー、って思って」
リョータがもしも学校に居たらとっても楽しかっただろうなぁ。とひっそりリョータが私の学校に想像しながら並んで歩く。
ああ、これじゃあ今の学校生活が楽しくないみたいじゃない…いや、間違ってないのだけれど。
「私さ、高校入ってから友達が出来てないんだよね」
「…わん?」
「もう入学して2ヶ月経ったし、そろそろ友達作らないとなぁ。って思ってるんだけど…」
「わん…」
家はリョータが居るから寂しくないけど、学校は少し寂しいんだよね。と彼に向かって笑うとリョータはわん!と吠えながら私の目をじっと見つめていた。
ありがとう。と意味も無く彼に言うと満足したのか再び前を向いて歩き始めた。そしてしばらくすると家が近くなってきて、見慣れた景色が見えてきた。
「あら、名前ちゃんじゃない」
ふと聞こえた私を呼ぶ声に顔をあげると、私の中ではよく見知った顔が反対方向から歩いてきていた。
彼女は私の家のお隣の奥さんなのだが…少々苦手なのだ。