第10章 黒子のバスケ/黄瀬 涼太
「ごめんね。私犬飼ったことなかったから…ブラシとかないんだけれども、人用ので大丈夫かな?」
「わん!」
「…うん。ありがとう」
「わんわん!」
リョータは良い子だね。とふわり微笑むと、彼は濡れたままこちらへと突進してきた。なついてくれたのは嬉しいんだけれど…ちょっと、ちょっとだけ困るかも。
ちなみにシャワーは先ほど私が服を着た状態で行った。彼は別にシャワー中は大人しく普通でいたために、シャワーは嫌いでない。ということが分かった。
「リョータ、このあと病院いくから着いてきてね」
「わ…わん」
「…病院嫌なの?」
「わん」
「でも…行かないと…」
「…わん」
仕方ない。という風に少し身体を重くさせながらリョータは玄関の方に向かった。だけれども彼はシャワーを浴びたままのため床がどんどん濡れていく。
待って!と言うとリョータはしっかり止まって、私のことを見ていた。そして優しくタオルで身体を拭いてあげると、嬉しそうな顔をした。
最後に首輪を着けようとすると何故か嫌そうな顔をしたので、無理にしなくても良いかと思って首輪をテーブルの上に置いた。
「リョータが嫌がるなら着けないよ」
「!!わん!」
「どうしたの?やっぱり首輪着けたいの?」
「…わん」
リョータは違う!と言う意味でなのかブンブンと飛んで行きそうな勢いで首を振っていたため、違うのだと判断させてもらった。
じゃあ何なのー?と聞いてみても残念なことに私には犬の言葉がわかるはずがないので、何を言っているのかは理解できなかった。
「…それじゃあリョータ、病院行こうか」
「わん…」
「大丈夫、怖いところじゃないよ」
だから安心してね。と笑ったけれど、リョータはわふ…とやはり嫌そうにしていた
そしてリョータが着けたがらなかった首輪を見つめて、私はリョータへと問いかけた
「君の名前は、リョータで良い?」
「わん!」
「うん分かった。リョータは首輪着けたいの?」
「わん…」
「…そっか、じゃあ着けないで行こうか」
リョータは良い子だから、きっとさっきみたいにリードを繋がなくても大丈夫。と目の前にいるリョータを信じてにこりと笑った。
するとリョータはまるで逃げるかのように玄関へと行ってしまったが…きっと、今ので仲良くはなれたのだと思う。