第10章 黒子のバスケ/黄瀬 涼太
「…わん」
「よ、良かったら…うちに来ますか?」
雨の中、私は犬を見つけた。水に濡れてしまってはいるもののまだ綺麗な黄色い毛並みのゴールデンレトリバー
その犬は段ボール箱の中に入っていて、箱には拾ってあげて下さいと書いてあり…犬はすごく寂しげな目をしていた。
いや、別に同情というわけではない…言いたいところだがほとんど同情だ。私だって家で1人ぼっちは寂しいのだからか、犬くらいならいてくれても、話し掛けても…良いではないだろうか。
「…私に君は持てないんだけど、歩けるかな?」
「わん!」
問題ない。という風に彼は段ボールが飛び出して、私の足元をうろちょろと歩き始めた。その姿は可愛く、また元気の良さを教えてくれて捨て犬でも元気なら良かった。と考えさせてくれた。
彼は雨に濡れても構わないのか、私の所有している青色の傘には入らずに私の横へと並び歩き始めた。先に行って走ったりしない、とても良い子だ。
「飼い主さんは何で君を…捨てたんだろうね」
「…」
黙り込んだ犬はまるで人の言葉が分かるかのような反応をした。ごめんねと思わず謝ると私に擦り寄ってきたため、お返しにと首元を撫でたら気持ち良さそうな顔をしてくれた。
首元を触っていると固いものが手に触れて、私は何かと首元を探った。それはだんだん首輪なのだと分かり、それに彼の名前が彫られていた。Ryota、と。
「リョータ…?」
「わん!」
「そっかぁ…リョータって名前かぁ…」
「わんわん!」
「ふふ、よろしくね。リョータ」
尻尾を激しく振って喜ぶリョータに私は頭を撫でた。また彼は嬉しそうな顔をして笑っていて、私も思わず笑顔がこぼれた。
ああ、本当素直で良い子なのに、なぜ飼い主さんは捨てたりしたんだろうか、とても不思議だ。
「リョータってことは、男の子なんだね」
「わん!」
「ふふ、じゃあカッコよくするために、家帰ってからはまず身体洗わないとね」
「…わん」
急にリョータの元気がなくなったため、どうしたのかと思ったが恐らくシャワーが苦手なのではないだろうか。と推測した。
大丈夫だよ。怖くないよ。と話し掛けていると、私に向かってリョータは寄り掛かってきた。ちょっとだけ重い…かも。
止めていた足を再び動かして、リョータと共に歩き始めた。少しだけ、心が軽い。