第65章 星空
向かったのは、駅近くのシティホテル。
驚くことに、予約もしてあった。
「……みわと、離れたくなくなると思って」
そう言った涼太は余裕がなく、いつもの彼らしくない。
エレベーターの中では、他の宿泊客もいたせいか無言だった。
繋いだ手だけが、いつまでも熱い。
涼太が部屋をカードキーで開けると、驚く程の力で腰を引かれる。
バタンとドアが閉まる音がする頃には、ふたりの唇は深く合わさっていた。
「ン!」
まだ、ベッドにも辿り着けていない。
入口にある姿見には涼太の背中と、涼太の背中越しに蕩けている自分の顔が映っている。
「ぁ、りょう……」
口づけを交わしながらグッと抱きしめられた身体は軽々と宙を浮き、気づけばベッドの柔らかさを背で感じていた。
「ン、ハァ……みわ……」
涼太の息も荒い。
お互いの吐息が、お互いの炎を煽って燃え上がらせているよう。
身体はどうしようもなく求め合っていた。
「ごめ、結局……こうなっちゃって……」
申し訳なさそうにする涼太の頭を掴んで、今度は自分から唇を重ねた。
私だって、期待してなかったわけじゃない。
同じ気持ちだって。
「ん、んッ」
涼太の手が、Tシャツの裾から這い上がってくる。
「……まって、りょうた……シャワー」
今日の日中は暑くて、少し汗ばんでしまった。
ニオイも気になるし、汗を流したい。
「いい、そのままで」
そう言うと彼の手はカーディガンを脱がし、Tシャツを捲り上げた。
「やッ、ちょっと……!」
「見た事ない、これ」
彼の前に突然曝け出されたピンクの下着は、デート用にと新しく購入したものだった。
いつも肌触りで選んでしまって可愛げがないのを反省して、完全にデート用のレースばかりのデザイン。
「……可愛いっスね」
下着ごと味わうように、涼太の唇が下着のラインをなぞっていく。
少しだけ肌に触れるもどかしさに、無意識に身悶えてしまっていた。
「ん……んん」
「みわ、流石にふたり暮らしの時までとはいかないっスけど、今日は寮でもお祖母さん家でもないんだから、声聞かせて?」
「ゃ……。恥ずかしい」
最近は涼太の部屋でしたり、私の部屋でしたりという事で、声を出すのを我慢してばかりだったから、突然声を出してと言われても……。