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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第65章 星空


「……え?」

「ちょっとふたりきりになれるところに行こうよ」

その手がまさぐるように動いたのを感じて、やっと私の本能は危険を察知し、微睡みから覚醒した。

ここは危ない。

振り切るように何も言わずに立ち上がる。
涼太、涼太を探しに。

「待ってよ、ねえ」

手首に強い拘束感を感じて、思わず振り向いた。
ポロシャツを着た男性。勿論、見た事も会った事もない。

「君、俺の好みなんだよね。今日は休みなの?」

「は、離してください」

「ひとり? どっか行こうよ」

引かれる手の強さに逆らえない。
自分の側に引いても、倍以上の力で引き返される。

「やめてください。離して」

嫌だ、怖い。
また、私のせいなの?

涼太……!


睨んでも、手を振りほどこうとしても、男は離してくれる気配がない。

刹那、突然ぐいっと腰ごと後ろに引かれ、思わず変な声が出た。

「っきゃ……」

「汚い手を離せ」

男の目線が私の背後、高い場所に向けられる。

スッと手首を掴んだ手の力が抜けた。

……あったかい、おひさまみたいな香り。
その顔を確認する必要もなく、大きな胸に顔をうずめた。

「彼女に何の用だ」

ぽかぽかと温かい胸の中とは対照的な、冷たい声。

「いや、暇そうにしてたから、誘っただけ、です」

男は上背のある涼太に完全にビビッて、逃げて行った。



「……ごめんね、遅くなって。大丈夫? 何かされた?」

大きな手が手首をさすってくれる。
無遠慮に突然掴まれた手首は、赤い跡がついていた。

涼太の唇が、手首に優しく触れる。

「アトになってる。痛いっスか?」

赤い舌が跡をなぞると、背筋を甘い感覚が走った。

「っだ、いじょうぶ」

「ごめんね」

だって、全部私のせいだから。

額に優しくキスを落としてから、先ほどとは違うベンチに誘導してくれる。
買って来てくれた水をひとくち飲んで、大きく息をついた。

「……他行こうか? ここじゃ気が休まらないっスか?」

気を遣ってそう言ってくれたんだろうけど、身体はまだ怠いままだった。

「ここで平気」

「みわ、ちゃんと寝てる?」

突然のその質問にギクリとした。
思わず顔に出てしまったんだろう、私の顔を見て涼太が小さくため息を吐く。

「……やっぱり、寝れてないんスね。今日はもう帰って休もうか」

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