第65章 星空
……
20分位歩いただろうか。もう、スカイツリーは目の前だ。
今日は日差しが強くて、少し暑い。
太陽が光度を増して、近づいてくるようで。
喉が渇いて来た。
また、夏がやってくるんだな……。
「みわ、気分悪い?」
少し水が飲みたいなと思っていたところに、涼太が顔を覗き込んできた。
「あ、……うん。喉が渇いたかなって」
どうしてわかるんだろう。
「じゃーちょっとそこの公園で休んでいく?
スカイツリーの近くは人だらけだろうし」
「うん」
良かった。
実はもう結構身体が怠くて、これ以上歩き続けるのはキツかった。
自分でも体調の変化が驚くほど突然やってきたのに、それを敏感に感じ取った涼太に驚きを隠せない。
公園内の大きな花壇を取り囲んだベンチと、日陰になっているベンチがあって、涼太は日陰のベンチに座るよう私を促した。
「ちょっと飲み物買ってくるから、ここで待ってて」
「ありがとう……」
本当に、今日は天気がいい。
花壇に降り注ぐ日差しの強さは、夏と変わりない。
もう少ししたら、蝉が夏の訪れと勘違いして、鳴き始めてしまいそう。
涼太とこの日差し、どっちが眩しいかな。
目を細めていると、唐突に激しい眠気が襲ってきた。
最近また寝不足気味だったのに加えて、昨日は緊張で殆ど眠れていない。
この睡眠に関する問題も、どうにかしなきゃいけないのに。
涼太の隣でないとグッスリ眠れないなんて、どうかしてる。
ひとりでもちゃんと出来るようにならないと、彼の隣にいるのも恥ずかしい。
うっかりウトウトしていると、隣にひとが座った気配がした。
……涼太ではないのはなんとなく分かる。
でも、どこのベンチも誰も座っていないのに、どうしてわざわざここに?
それでも強烈な眠気に勝ち切れず、顔を上げられずにいた。
「ねえ、ヒマ?」
それが、私に向けられたものと気付かずに暫しやり過ごしてしまう。
突如膝に重みを感じて目を開けると、知らない手が私の右ひざに乗っていた。