第65章 星空
「貴重なみわの写真ゲットっス」
涼太はさっきからずっとスマートフォンに釘付けだ。
「……そんなに撮りたかったの? 写真」
「そりゃモチロン、壁紙にしたかったし」
「え、やだ、しないでね?!」
「もうしたっスけど……」
そう言ってこちらを向いた画面には、楽しそうにしているふたりの姿が。
トップ画面にはアプリのアイコンなどがあるからハッキリとは見えないものの、モデルとして撮って貰ったあの写真よりも何倍も恥ずかしい。
「ちょ、ちょっと待ってだめだめ! 貸して!」
手を伸ばすが、今年更に身長が伸びて念願の190㎝台になった涼太には届かない。
「も、もー!」
「残念でした~」
涼太はそう言って笑いながら、スマートフォンを仕舞ってしまう。
ううう……。
「ね、みわ。早めのお昼にしない?」
そう言って振り返った涼太の笑顔が太陽みたいに眩しすぎて、もう、文句言えないじゃない。
きらきらして、大好き。
「……ずるい」
ぽつりと呟いたその声は、果たして届いているのか。
お昼ご飯は、天丼を食べた。
その後、お腹いっぱいだというのに浅草寺の参道にある商店街できびだんごや人形焼き、お煎餅などを食べ歩き。
肝心のお寺に辿り着いた時にはもう満腹で倒れそうになっていた。
「みわ、おみくじ引いてこーよ」
「うん」
シャカシャカとおみくじ筒を振り、おみくじ棒に書かれている番号の紙を棚から取り出すと……
「あ、凶」
まさかの、ふたりとも凶だった。
「オレ結構おみくじって大吉ばっかりなんスけどね、珍しい」
私と居て、運気が落ちちゃってるのかも……なんて、真面目に考えてしまう。
中身を読んでみると、それはそれはもう最悪な事ばかり書かれている。
救いようがない。
小さくはあとため息をついていたけど、涼太はあんまり落ち込んでいないみたい。
「ま、今が凶ならもう上がるしかないっスよね」
そう言って、おみくじを鉄の棒に結んでいる。
このひとの、こういうところが好きだ。
決して他に左右されないしなやかさ、強さ。
ひとに振り回されてばかりいる私とは、根本から違う。
このひとが、他人に振り回されるところなんて、見たくない。
自分の意思を貫いてこれからも生きていって欲しい。
……振り回されるのなんて、見たくない。