第14章 花火
「ごめんね。ゆっくり寝ちゃって……片付け、私やるから!」
「じゃあオレ皿洗うから、棚に食器戻してくれるっスか?」
「えっ、私やるよ?」
「2人でやった方が速いっしょ! それに水仕事は手、荒れちゃうし」
優しい黄瀬くん。
って……
「荒れちゃうからモデルさんが水仕事やっちゃだめでしょう! 交代!」
「いや、モデルは正直もうどーでもいいんスけどね……」
黄瀬くんは渋ったけれど、棚の配置も分からないからと、私が洗う事でようやく同意して貰った。
部屋に戻ってからは、黄瀬くんをベッドに誘導する。
「ストレッチはもう少ししてからにしよう。胃に負担かかっちゃうし……マッサージしておこうか」
「みわっちだって食後じゃないスか。ちょっと休んだらどうスか?」
「大丈夫だよ……って、ちょっと! どうして何にも履いてないの!」
「え〜ちゃんとパンツ履いてるし……」
「そ、そーゆー問題じゃないよ! でも、あの、マッサージは足出して貰うから、そのままでいいんだけど……」
どうしても下半身が気になってしまって、タオルケットをかけた。
「そんなに意識しちゃってるんスか〜?」
こ、こんな格好されて……意識するに決まってるでしょう!
とは言えず……
「ち、違うよ! 冷えるとよくないから!」
と、誤魔化した。
太ももから足首まで、ゆっくり触って筋肉の張りなどを確認する。
「なんか……卑猥なカンジがするっスね……」
「しません」
あ、ここ張ってる。
どうしても怪我をすると、庇って他の部分にも影響が出てしまうんだよね……。
「ちょっとここほぐすね。多分痛めた足、無意識で庇っちゃってるんじゃないかな……」
「あ〜、確かにそこ、気持ちイイっスね……」
監督の伝手でプロのスポーツ整体師の方とも知り合う事ができ、時間がある時には本格的に教わっている。
卒業後もウチにどう?と声をかけてくれる先生も多くて、大変ありがたい。
「黄瀬くん暇でしょ? 何か観てていいよ?」
「でも、NBAとかじゃツマンナイっスよね?」
NBA。
実はまだ、動画は観た事はない。
「……観てみたいかも。展開早い時とか、解説して貰える……?」
「もっちろん! コレ、時間なくてまだ観れてないんスよね」
わ、まるで子どもみたいな笑顔だ。