第14章 花火
台所まで肩を掴んで電車ゴッコ。
(オレ1人でやってるだけっスけど……)
「あー……いい香り……」
「みわっち、何飲む? コーヒー? 冷たいモノのがいいっスか?」
「ん……コーヒー……がいいかな……ぎゅーにゅー……いれて……ほし……」
「了解っスよ。めちゃくちゃ眠そうだけど大丈夫っスか? まだ寝とく?」
ぐらぐらと船を漕いでいる。
既に寝てない?
「……だいじょぶ」
「そうスか? ハイ、ドーゾ」
「いただきます……」
「そうだ、みわっち、食事終わったらストレッチ手伝って欲しいんスけど……」
「ストレッチ……うん、分かった。食後少し経ってからの方がいいね。あと、水分多めに取っておいてね」
「さっきまでの寝ぼけ声がウソのように、スイッチ入ったっスね!?」
面白いなあ、みわっち。
「おいしい、ありがとう」
「みわっちはいつも、朝食ってどうしてるんスか?」
「あ、私は……冷凍しておいた鮭焼いて、小鉢と納豆、海苔、お味噌汁とかかな? 1人だから結構テキトーだよ」
「和食、いいっスね!」
「おばあちゃんがずっとそうだったからね、なんとなくだけど……」
「じゃーみわっちがオレんち泊まったら、今度作って貰おうっと」
「……?」
「オレ、ひとり暮らしさせて貰おうと思ってて。実家からじゃ移動時間がかかっちゃうし。やっぱり、ギリギリまでバスケしてたいんス、今」
「そうなんだ……!」
「親にはお金苦労かけちゃうっスけど、そこはまあ、出世払いってことで!」
「もう部屋決めたの?」
「ネットで探してるくらいなんスけど、ちょうど良さそうなトコがあって。
なんか、タイミング的にみわっちと同じ部屋にすれば良かったっスね」
「……同じ部屋?」
「一緒に暮らすんスよ」
スープを吹きそうになるみわっち。
まだまだハードル高かったっスかね。
もし一緒に住んだら……と、今日の夢みわっちが脳裏に浮かぶ。
セリフはアレだったけど、顔はいつも見てるみわっちの気持ち良さそうな顔だったから、凄く興奮した。
(だから朝からやらかしたんだけど)
ダメダメ。夢の中で激しく抱くとかすげー汚してる感じする。
ごめん、みわっち。