第65章 星空
昨日は緊張して余計に眠れなかった。
涼太と街に出掛けるようなデートはとても久しぶり。
……それこそ、年始に商店街に買い物に出掛けたのが最後のような気も……。
ふたりともバスケばかりの毎日だったし、会う時は部活が終わってから少しの間、どちらかの部屋で過ごすことばかりだった。
……正直、お母さんの言葉を思い出してから、ひとが沢山いる場所へ出るのが怖かった。
涼太の気持ちを……確かめるのも、怖い。
涼太が私を想ってくれている気持ちが、彼が自然に抱いた気持ちじゃなくて、私のそういう性質が引き起こしているものだと分かって、どうしたらいいのか迷ってしまっていた。
なんでも相談して、と言われていたけれど、本当にこんな事を相談して受け入れて貰えるのか、自信がない。
「みわ! 黄瀬さんが迎えに来てくれたわよ」
階下からおばあちゃんの声がした。
「お待たせ!」
今日はシンプルなTシャツの上に薄手のカーディガン、膝丈のスカートにした。
極力露出が少なくなるように。
……あれを思い出してからスカートを履くのに抵抗があったけれど、やっぱり涼太の前では少しは女の子らしくしたい。
でも、涼太に買って貰った冬用のワンピースのスカート丈は、暫く履けそうにない……。
「みわらしいカッコでカワイイっスね」
そう言う涼太は、白い長袖シャツの中に黒のTシャツを着て、ジーンズを履いていた。
物凄くシンプルな服装なのに、これ以上ない位彼の魅力を最大限引き出している格好に見える。
うっかり穴が開くほど上から下まで見つめてしまい、涼太と目が合って頬から火が吹き出しそうになってしまった。
「今日は、オレが中学時代によく行ってたスポーツショップに行こうと思うんスけど、いい?」
と言われ、私たちは電車に乗って東京方面に向かって行った。
遠くまでゴメンネと涼太は謝っていたけれど、昔の涼太が歩いていた場所なんだと思うと、街中を歩いているだけでウキウキした。