第65章 星空
ゴールデンウィークには、IH予選前の最後の合宿が行われた。
新生海常バスケ部の仕上がりは上々。
完成度としてはまだまだだが、十分に他の強豪校と渡り合えるレベルだ。
みわとスズサンの関係も、以前よりも落ち着いているように見える。
……まだまだ態度はいいとは言えないが、みわの仕事ぶりは本当に素晴らしいし、それは彼女も分かっているのだろう。
指導を受ける際には、きちんと先輩・後輩としてやっている。
みわとキオサンがうまく連携を取り、1年生マネージャーの指導はバランス良くやれているようだ。
しかし、みわは疲れた顔をしている事が増えた気がする。
棚の上に手を伸ばしているせいで覗いている脇腹には以前よりも深く腹筋が刻まれているが、その腰は更に細くなった。
明日の休養日、センパイからチケットを貰ったプラネタリウムでもと思ったけど、ゆっくり休んで貰った方がいいだろうか……。
「ねえみわ、明日の休みなんスけど」
後ろから声を掛けると、少し驚いたような顔をしてからすぐに笑顔になった。
少しだけ顔色も良くない気がするんだけど……。
「あ、バッシュだよね? いいよ!」
「へ?」
バッシュ?
「ん? バッシュがもう傷んでるから買い替えるっていう話じゃなくて?」
そう言われ足元を確認すると、確かにつま先や踵の部分が古くなり、壊れる寸前だった。
これからIH予選も始まる。今の内に買い替えておくべきだろう。
「あ、うん、そうっスね」
相変わらず、みわはオレ以上にオレを見ているんスね。
マネージャーなんだから当然気付く事なのかもしれないが、それが嬉しい。
帰り道、手を繋いで歩いているとみわが突然足を止めて、天を仰いだ。
「あー……曇っててお月様が見えないや」
「月、好きなんスか?」
「なんとなく、力が貰える気がして」
そう力なく微笑んだ笑顔はなんだかとても儚くて、そのまま雲に溶けて消えてしまいそうに見えた。
「じゃあ、また明日ね。
お店は涼太の行きつけの所でいいんだけど、お任せしちゃってもいいのかな?」
「うん、明日のコースはオレにお任せで。
迎えに行くっスよ」
少し照れた頬にキスをして別れた。