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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第64章 魔性の女


「涼太、お願いだから寝て」


変わらず髪を触っている手を捕まえて、宥めるように撫でた。


「……んー……」


涼太はそれだけ返事をして、もそもそと布団の中へ戻っていく。


「辛いんでしょう」

「……ツラクないっスよ。みわに拒まれたのがもっとツライ」

「こ、拒んだっていうか……治ったら、ゆっくり……」


自分は何を言っているのかと、ハッと気づく。

涼太が肩を揺らして笑っている。


「治ったらゆっくりシていーの? そりゃ楽しみっスね……」

「も、いいから早く寝て」


赤面している顔を隠したくて、布団を涼太の顔にかぶせた。


「……ね、みわ。オレの事、スキ?」

「な、なんでいまそんなこと」

「ねえ、言ってよ。スキ?」

「それはまた、次回改めまして……」

「みわ」

「っ」


なんで、そんな声で呼ぶの。

その声は、もっと違う時に使う……熱く、身体を求め合ってる時の声だ。


「……すき」

「もっと言って」

「い、言ったよもう!」

「もっと」

「…………す、すき」

「どもった」

「い、いいのっ」

「最近、みわとの距離が近い気がするのは、オレの気のせい?」

「距離?」

「うん、こころの 距離」


こころの……距離?


「……よく分からないんだけど、近いとダメなの?」

「ううん、逆。嬉しい」

「そ、そう……」


涼太が何を言いたいのかが掴めない。
もしかして、熱で朦朧としている?


「……みわ、スキだよ」

「う、うん」

「すげぇスキ」

「も、もう分かったから」

「抱きしめさせて……」


涼太が布団の中から両手を伸ばしてくる。
まるで、甘えん坊の子どもみたいだ。

困ったひと、と思いながら彼の胸に吸い込まれるように包まれる。


「……みわ、本当に気持ちいいっスよね」


違う、気持ちいいのは涼太だ。

私を守ってくれる、大きくて、安心する胸。
こんな気持ちになった事がない。

このひとに守られたい、守りたいと思うのは初めてだ。

こんな気持ち、初めて教えて貰った。




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