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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第64章 魔性の女


つい一昨日、心臓が飛び出しそうになるほど緊張しながら忍び込んだ海常男子寮。

まさか、こんな短期間で2回も忍び込むことになるとは思ってもみなかった。

おまけに、前回はまだ深夜だったから良かったものの、今日はもうすっかり日が昇っている。

「中村先輩、本当に大丈夫でしょうか……?」

「大丈夫だろ。どうせ殆どが朝練に出てるよ」

サラッとそう言う中村先輩はとっても頼もしいけれど、不安で不安で仕方ない。

涼太の部屋は結構入口から遠かった。

「冷却シートなら俺の部屋にあるけど持ってく?」

「いいんですか? お願いします!」

「ん。じゃあ俺の部屋寄ってくか……」

中村先輩はポケットから鍵を取り出した。

「一応、神崎も玄関んトコ入って待ってて。外いると誰が通るか分からないから」

「はいっ……!」

むしろ、廊下に置いてきぼりにされる方がコワイ。

涼太ほどとはいかないまでも、長身の中村先輩の背中に隠れて寮へと足を踏み入れた。



寮の中は、今日も静かだ。
本当に、ここにひとが住んでいるのかと思うほど。

「俺の部屋、ここ」

中村先輩がそう言って、カギを開ける。

「入って」

「あ、はい」

そう答えて玄関に入ろうとした時……
近づいてくるいくつかの声が聞こえた。

「昨日のあの展開だと、やっぱり1回パスした方がいいんじゃないか?」

「いや、ドリブルでフェイント入れた方が……」

「ッ、急いで!」

「っきゃ……!」

中村先輩に強く背を押され、私は玄関に倒れ込んだ。




バタンと、玄関のドアが閉まる。

「……ごめん神崎、強く押しすぎた。大丈夫か?」

「大丈夫です。すみません私もビックリして、固まってしまいました」

中村先輩が伸ばしてくれた手を取った。

玄関から中を見渡せるようになっているけれど、2年住んでいるにも関わらず、部屋の中はキレイに片付いている。

「ちょっと待っててな」

「はい、お願いします」

先輩は小さい冷蔵庫を開け、冷却シートの箱を取り出した。

「まあ、いくつ使うかわかんないけど、このまま持ってけよ。
ところで、黄瀬には連絡してあるのか?」

「……あッ」

「……神崎は、なんかちょっと抜けてるよな」

「……スミマセン……」



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