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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第64章 魔性の女



「黄瀬さん、今日夕飯はどうする予定なの?」

「あ、寮に戻ったらテキトーに……」

「こんなお婆さんと一緒じゃ嫌かもしれないけれど、良ければ食べていかない?
みわの分があるのよ、この子はさっき雑炊を食べてしまったからね」

「いいんスか」

「黄瀬さんが良ければ」

「ありがとうございます。ご馳走になります」

なんだかふたりで話が進んでいる。
私も混ぜて欲しい。

「みわは、ちゃんと寝てるんスよ」

見透かされたように、制止されてしまう。

「……はい」

「じゃあ黄瀬さん、いつでもいいから。
降りて来たらご飯にするわね」

「ハイ、よろしくお願いします」

おばあちゃんは、そう言って部屋を出て行ってしまった。

「おばあちゃん、ズルい」

つい、子どもみたいな愚痴を漏らしてしまう。

「何言ってんスか。ほら、寝付くまで横にいるから」

涼太が布団のすぐ横に座り、こちらを見下ろしている。
こんな優しい目をするのを知っているのは、自分だけだと思いたい。

それでもやっぱり、どうして彼が私のことなんかを好きになってくれるのか、分からない。

可哀想な過去があるからだろうか。同情?
乗りかかった船的な?

彼の気持ちに理由をつけようとしている自分が嫌になる。

「みわ?」

「あ、ごめん、寝るね」

……と言っても、さっき少し眠ってしまったので、また寝付くまでには暫くかかりそうだ。

いつも、部活で散々疲れている身体でもなかなか寝付けなくて、どれくらい苦労していると思っているのか。

涼太が、私の隣に横になって目線を合わせてくれる。

「涼太、畳とはいえそんなところに横になったら身体痛くない?」

「大丈夫っスよ、ほらほら」

涼太の手が、布団の上からぽんぽんと私をたたく。

まるで、お母さんが子どもにしてくれるように、一定の間隔でぽんぽん、と。

「ふふ、子どもみたい」

「たまには甘えてくれてもいいじゃないスか」

「……昨日、甘えたばっかりだよ」

昨日はずっと彼の熱に甘えて、甘えて、蕩けるようだった。

「回数制限はナシっスよ」

「涼太は……優しすぎるよ……」

驚いたことに、また瞼が重くなってきている。

少し高いトーンで優しく歌ってくれる子守歌が耳に心地よくて、そのまま眠りに吸い込まれていった。


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