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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第64章 魔性の女


「あれ、どこ行くの?」

校門を出ると、みわは桜並木の方向へ歩き出した。

とっくに桜は散り葉桜になってしまっているが、それはそれでまた違った美しさがある。

まあそれは今はいいとして、そっちには駅前商店街と駅しかない。

「どこって……駅だけど」

足元がおぼつかないみわは、そんな事をサラッと言い出した。

「冗談やめてよ、そんな身体で電車とか。今タクシー捕まえるから」

オレはみわの熱い手を引き、すぐ近くの幹線道路でタクシーを拾うべく歩き出した。
先に、呼んでおいてあげれば良かった。

「ちょ、ちょちょちょっと待って!」

みわは急にブレーキをかけた。
まるで散歩中に進行方向を突然変える犬のようだ。

「ん? なんスか?」

「あの、タクシーっていうのは、もう他に選択肢がなくなった時にですね」

「うん、ないじゃないスか、いま」

「ある! あるよ!」

「しんどいっしょ、タクシーならすぐだから」

細い腰を抱くと、もう殆ど力の入っていない身体が容易にオレに傾いた。

「あっ」

「あ、エロい声」

「りょ、涼太!」

「はは、冗談っスよ。いくよ」

「待って、待ってじゃあバスに乗るから!
バスならおばあちゃんちのすぐ近くに停まるから!」

みわは頑なにタクシー利用を拒んでいる。

「なーんでそんなに拒むんスか?」

「だって、涼太お金貯めなきゃって言ってるんだから、そんな無駄なお金使ってちゃダメだよ」

どうやら、みわには『甘える』というのは相当のハードルらしい。
ラッキー、ありがとうでいいのに。

「別にいいんスよ、目的は一緒なんだから」

「え?」

「いや、なんでもないっス」

「とにかく、バス空いてたらバスでもいいでしょ? バスで帰るよ」

こうなったらみわも大概頑固だ。
座れるならいいけど、タクシーの方が安心なのに……。

「……混んでたらソッコータクシー捕まえるからね」

「う……ハイ……」


海常高校前のバス停に着くと、ちょうどバスが到着するところだった。
車内はほぼ無人で、前には海常生が数人並んでいるだけなので、座れそうだけど……。


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