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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第64章 魔性の女





「……せくん、黄瀬君」

「んぁ」

顔を上げると、教室内の大半の人間が既におらず、キオサンがオレを覗き込んでいる。

「黄瀬君、もう授業もホームルームも終わったよ。ずっと寝てたね」

「……あー、マジっスか、寝てた」

そもそも6時限目の教科はなんだったか、そういうレベルだ。

「私保健室寄って行くけど、黄瀬君は?」

「行くっス。ちょっとジャージに着替えるから待ってて」





「みわちゃん、調子はどう?」

保健室に入ると、みわは、ベッドの上で起き上がっていた。

「うん、1時間寝て元気になったよ」

「いや、寝てないじゃねぇスか」

どう見ても寝てない。顔見れば分かる。
赤い顔して、熱もまだ高そうだ。

「ね、寝てたってば。今はキオちゃんが来てくれるから準備してたんだ」

「ん? 何の準備っスか?」

みわは、手元のクリップボードからプリントのようなものを出した。

「これね、キオちゃん。今日の練習の時の流れ。
スズさんがきっと戸惑っちゃうと思うから、サポートしてあげて欲しいの」

どうやらこの1時間で、せっせとこれを作っていたらしい。
だからね、体調悪い時位、休めっての……。

「うん、分かった。まかせて」

「ありがとう……ごめんね、今日私はお休みをさせてもらうね。
皆のノートは、いつものところに入れてあるから」

みわはカバンにクリップボードをしまい、帰り支度を済ませた。

「うん、みわちゃん、お大事にね」

「送るっスよ、みわ」

「え、ひとりで大丈夫だよ」

そう言ってベッドから降りたみわは、早速よろけた。

「ほら、危ない」

「だ、大丈夫だって! ちょっと着地失敗しただけだよ、過保護!」

肩を支えると、制服の上からでも熱が伝わってくる。
放っておけるか、こんな状態。

「どこの病院行くの?」

「おばあちゃんちの近く……かな?」

「じゃあお祖母さんちまで送るって。早川センパイには言ってあるから心配無用っスよ」

「用意周到……」

「至れり尽くせりって言って、みわ」

「キオちゃん! ごめんね!」




そう言ってふたりは身体を寄せ合って去っていった。

「……いいなァ……」

取り残された少女の呟きを聞く者はいない。



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