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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第64章 魔性の女


視界が段々と開けてくる。
ぼんやりと、像が結ばれていく。

「……キオ、ちゃん」

心配そうに覗きこんでいる彼女の、ホッとした表情が目に入った。

「よく眠れてたみたいでよかった。
やっぱり今日は早退した方がいいって、保健師さんも言ってたよ」

身体の寒気は全くよくなっていない。
頭が熱く、熱が出てしまっているのが分かる。

「ごめんね、ホントバカ」

先輩としての、マネージャーとしての自覚ゼロだ。
私がいきなり倒れたら迷惑がかかる人が沢山いるのに。

「……昨日、雨の中ずっとネックレスを探してたんだって?
そんなに大切なものだったの?」

「うん……涼太に、貰ったものだから」

「そっか……でも、そんなに大切な人なら、心配かけちゃダメだよ? さっきの黄瀬君、血相変えて気の毒だったよ」

「あ、涼太、気づいちゃったよね」

「気づいちゃったどころか、みわちゃんをお姫様抱っこしてここまで運んでくれたんだよ」

「お、おひめさまだっこ!?」

そういえば、意識が暗くなる直前に涼太の声が聞こえた気がするし……身体が浮く感覚があった。

「……そんな……」

こんなに重いものを持って大丈夫だっただろうか。

「すっごく格好良かったんだから」

そう言ったキオちゃんの目は、恋する女の子のものだった。

「……キオちゃん、もしかして……」

「……あ、ううんそれはもう諦めたから大丈夫!
黄瀬君の彼女がみわちゃんって言うなら、もう納得だし」

納得?
涼太の横に私がいて?

「どうして? 私、何にも取り柄なんてないし……」

「そんな事ないよ。みわちゃんは何でも出来る。
……っていうと語弊があるかな。何でも出来るように、努力してる。
真面目でまっすぐで純粋で、いっつも努力してる。そういう所が、黄瀬君にそっくり」

出来るように……努力している姿。

「私も、みわちゃんに憧れてるばかりじゃなくて、
自分ももっと素敵になろうって思えるんだ。これからも、色々教えてね」

「ありがとう……キオちゃん……」

「あっ、予鈴! カバン一応そこに置いておいたからね。
部活前にまた一度見に来るね。お大事に!」

キオちゃんはそう告げて、笑顔で去っていった。

私は本当に、周りのひとに恵まれている。
彼らに何を返すことが出来るだろう。


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