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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第64章 魔性の女


頭が、痛い……。
なんだか寒気も酷い……。

お昼休みを過ぎた辺りから、私の体調はどんどん悪くなっていった。

やはり、昨日少し無理をしてしまったからか。

あの後涼太に……温めて貰って、もう大丈夫だと思ったのに。

この時期に無理をするのが一番良くない。

仕方ない、午後の練習は少し早めに上がらせて貰って、病院に行ってこよう。

市販の薬を飲むよりも早く治るだろうし。

マネージャーをやるようになってから、風邪の引き始めの処置はちゃんと出来るようになったのにな。情けない……。

キオちゃんにも、言っておこう。
キオちゃんは、涼太と同じ隣のクラス。

教室からキオちゃんを探そうと中を覗くと、つい目に入ったのはさらりと靡く黄色の髪。

涼太だ。

楽しそうに男子と何か話している。
それを遠目で見る女子の集団。

私の存在に気付くと、笑顔で手を振ってくれた。

いけない、うっかり忘れそうになってしまった。
私はキオちゃんに用が……

「みわちゃん?」

後ろからかけられた声に振り返ると、そこにはキオちゃんがいた。

「黄瀬君? 呼ぼうか?」

「あ、ううん、キオちゃんに用があって来たの」

「あ、そうなの?」

「うん、実はちょっと風邪引いてしまったみたいで……午後、早めに上がらせて貰おうと思うんだけど、残りの時間、1年生達を見て貰えないかな」

「大丈夫? 無理せず早退した方がいいんじゃない? それか、部活には出ないで帰るとか」

「ごめんね。大丈夫だと思うんだけど、そんなに熱」

話している途中なのに、突然視界が歪む。

「みわちゃん?」

足下が崩れ落ちたような感覚。
力が入らない。

声が出ない。

キオちゃん。

咄嗟に彼女にしがみつこうと思ったのに、腕は空を切った。

足に冷たい廊下の感触。
ひどい寒気に、身体が震える。

「みわちゃん!」

「あれ……」

目の前が暗い。
どっちが上でどっちが下かが分からない。

「みわ!」

あ、この声は。
ふざけたりする時よりも、少し低い声。
ふたりきりの時よりは、少し高い声。

ふわっと身体が冷たい床から浮いたような感覚に、ひどく安心した。


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